リン酸基結合分子の変化によるリン吸収端構造変化とそのクロマチン可視化応用
【研究キーワード】
吸収端構造 / 軟X線顕微鏡 / リン酸基 / コンフォメーション / 電子構造 / 軟X線 / 誘導放出抑制 / シンチレーター / STED / 超解像 / 高空間分解能 / ナノ
【研究成果の概要】
20年度はコロナ禍による移動制限、接触制限などにより、放射光施設を利用した実験がキャンセルになるなどの影響を受けた。そのため一部の放射光施設を利用した実験計画に遅れが生じ、当初予定になかった実験や解析などを行う必要が生じた。
アポトーシス細胞の各崩壊過程の評価においては、Ⅹ線吸収実験の代わりに赤外吸収実験とその結果のスペクトル解析を行った。その結果崩壊過程の各段階毎にリン酸基の振動構造が変化していることを見出した。また19年度に引き続きリン酸基の吸収構造の分子軌道計算を行った結果、DNA中のリン酸構造のコンフォメーション変化に基づくP3d軌道の変化により説明できることを見出した。現在これらの結果を論文にまとめている。
また研究目的に沿って開発する走査型2次元検出器は、試料を通過したⅩ線をシンチレーターに当て可視光に変換し、その蛍光領域を誘導放出抑制(STED)により微小点に制限し、その点を走査することで実現する。20年度はまず走査光学系の開発を行った。開発した光学系はベクトル偏光ビームを用いて得られた微小光点を走査するためにガルバノミラーとそれを走査するための制御プログラムから成る。次に軟X線励起による蛍光のSTED現象を示す物質として新たにEu:GGG、Tb:LSOのSTED現象の確認を行った。これらの物質は19年度の蛍光強度測定結果から300eVから1.3keVの軟X線領域において高い蛍光強度を示すことが分かっている。原理検証実験は、開発した走査光学系の結像レンズに分光器を加えて行った。その結果、Tb:LSO、Eu:GGGの軟X線励起蛍光におけるSTED現象には発光波長依存性があることが新たに確認できた。
【研究代表者】