膜タンパク質スーパーコンプレックスの構築原理と結晶化条件の解明
【研究分野】生体物性学
【研究キーワード】
膜タンパク質 / 結晶化 / X線結晶構造解析 / 結晶成長機構 / タンパク質立体構造予測 / 超分子複合体 / タンパク質立体構造形成機構 / 電子線構造解析 / 結晶構造解析 / チトクロム酸化酵素 / チトクロムbc_1複合体
【研究成果の概要】
過去3か年にわたる研究の結果、膜タンパク質スーパーコンプレックスの構築原理と結晶化条件の一般化に関して以下のことが明かになった。
膜タンパク質の立体構造の安定化の要因は膜貫通ヘリックス間の水素結合と静電的相互作用である。それに加えて、親水性部分が安定化に寄与している。したがって、脂質二重膜に埋まった疎外性表面を界面活性剤で覆って水溶液中に‘可溶化'することは立体構造を損なわずに膜タンパク質を単離する最もよい方法であろう。しかし、この結合している界面活性剤を介した相互作用は非特異的で、結晶の安定化に寄与するとは考えられない。したがって、親水性部分の大きな膜タンパク質ほど結晶化は容易であると推定できる。ウシ心筋チトクロム酸化酵素やチトクロムbc_1複合体は結晶化されているが分子量がそれらの約1/2である細菌の相同タンパク質はまだ結晶化されていないことは、この推定を支持している。結晶化の必要条件は標品の純度ではなく立体構造が完全であることである。さらに周期的な配列が可能になるためには、必ずしも分子間の相互作用が強ければよいわけではない。界面活性剤の種類によってこのような相互作用を制御することができる。例えば、チトクロム酸化酵素結晶のx線回析の分解能を6.5Aから3.5A以上に、界面活性剤の種類を変えることによって、一挙に向上させることができた。巨大な分子の結晶では、安定化を促進する相互作用が体積当りでは弱くなるため、結晶の完全性に限界があるという説もあるが、逆にいくら大きくてもそれが生理活性をもったタンパク質であるかぎり結晶化は可能であるとも考えられる。何故なら大きなタンパク質ほど立体構造の動的なゆらぎを小さくするような構造があるため、全体として安定であるだけでなく、特異的な相互作用も揺らぎが小さいだけ強くなるであろうからである。
【研究代表者】