神経行動学的ストレス評価法の開発
【研究分野】応用動物科学
【研究キーワード】
ストレス / 視床下部 / HPG軸 / 神経伝達物質 / サイトカイン / 神経行動学 / 免疫神経内分泌連関 / 動物福祉 / 生殖内分泌軸 / 免疫神経内分泌系
【研究成果の概要】
科学的根拠に基づく客観的なストレス評価系の確立が待たれている。本研究では、種々のストレッサーが生体に及ぼす影響について、自律機能の中枢である視床下部の神経活動を指標として個体レベルにおけるストレスの神経行動学的評価法の開発を目指した。この研究モデルの最大の特色は、電気生理学的・神経生化学的手法を応用した視床下部神経活動のリアルタイム解析と、従来の体系化された行動解析法を組み合わせようとした点にある。3年間にわたる研究期間を通じて,具体的には、シバヤギを基礎実験モデルとして以下に要約される研究成果を得ることができた。(1)行動学的検討:グラム陰性菌由来のエンドトキシンであるリポ多糖(LPS)を投与した際に出現する行動変化について、無拘束のシバヤギを用いた詳細な行動学的解析から,病態行動を数値化し基盤的実験モデルを作出することに成功した。(2)生理学的検討:上記の実験モデルについて,自律神経系,内分泌系および免疫系の変動を解析し,これらパラメターの相互関係について検討を行った。(3)免疫組織学的検討:ストレス反応に関連が深い神経ペプチドであるコルチコトロピン放出ホルモン,バゾプレッシン,オキシトシンについて脳内における局在様式を明らかにし,神経生理学的アプローチのための基礎情報を集積した。(4)免疫学的検討インターロイキン-1αおよびβ,腫瘍壊死因子TNFについて,遺伝子クローニングを行って塩基配列を決定し,遺伝子発現を行って生物活性を有する各サイトカインを回収することに成功した。(5)神経内分泌学的検討:多ニューロン発射活動を指標に視床下部機能を評価し,また覚醒・無拘束状態の動物より脳下垂体門脈血を連続採取方法の開発に成功するなど,ストレス時の神経内分泌反応を解析してゆく上で有用な研究手法を確立することができた。
【研究代表者】