記憶の獲得、保持、想起、全ての過程に不断の出力が必要な神経細胞の行動遺伝学的解析
【研究キーワード】
記憶 / ドーパミン / グルタミン酸 / GABA / アデニル酸シクラーぜ / 同時検出器 / cAMP / ショウジョウバエ / 連合記憶 / キノコ体 / 記憶形成 / ライブイメージング / 匂い記憶 / KCs / 忘却 / Glu / 情動 / 神経回路
【研究成果の概要】
ショウジョウバエの匂い学習記憶は匂い(CS)と、ドーパミンを介して電気ショックまたはショ糖報酬(US)を連合することで成立する。(1)ドーパミン神経はグルタミン酸及びGABAをcotransmitterとして放出し、記憶を調節していることを見出した。(2)Ca2+/calmodulin依存性アデニル酸シクラーゼ(AC)が、CSによるCa2+を介した活性化とUSによるドーパミンシグナル経由の活性化によりcAMPを生成することが連合の実体と考えられてきた。しかしCSのみでもUSを介在する同じドーパミンシグナルが動員されcAMPが生成されることを発見し、この概念を見直す必要性を提唱した。
【研究の社会的意義】
(1)知的障害が見られる脆弱X症候群の原因遺伝子FMRPのショウジョウバエ相同遺伝子の変異によって代謝型グルタミン酸受容体がKCsで過剰発現し記憶障害を引き起こすことが報告されているが、それはCotransmitterとしてのグルタミン酸シグナルの本研究により生理的機構として説明される。(2)匂い刺激がドーパミンシグナルを誘導しKCsでcAMPを生成することの発見は、現在広く受け入れられているメカニズムでは匂いを受容したKCsを他のKCsから区別することができ無いことを示唆し、数十年にわたって信奉されてきた同時検出機構の検証が必要である。
【研究代表者】