魚類の温度適応分子機構の解明と利用
【研究分野】水産化学
【研究キーワード】
温度適応 / 魚類 / Mg^<2+>-ATPase活性 / ミオシン重鎖遺伝子 / ミトコンドリア / 膜電位ポテンシャル / 筋原線維 / 5'上流調節領域 / Mg^<2+>ATPase活性 / 細胞小器官 / チロキシン / 高温耐性ニジマス / 筋小胞体 / ホルモン調節 / 遺伝子調節 / 分子機構 / ミオシン
【研究成果の概要】
コイの筋肉は温度馴化に伴い、低温型および高温型のミオシン・アイソフォームを可逆的に発現する。このような変化はミオシンに限らず、筋小胞体などの細胞小器官や、種々の酵素タンパク質にもみられる。このように、魚類は温度適応する際に、その生体成分を包括的かつダイナミックに変化させる。一方、温度情報が生体調節に至るまでには、種々のホルモンが働き、多くの遺伝子が関与していると考えられるが、その詳細は不明である。本研究は、このような魚類の温度適応の分子機構の解明を目的とした。
まず、コイ速筋の低温型および高温型ミオシン重鎖遺伝子につき、その転写領域の構造を決定し、約-1kbに存在するMEF2結合配列が転写活性に必要であることを示した。さらに、メダカについても、ミオシン重鎖遺伝子の温度依存的な発現には5'上流調節領域が重要であることを明らかにした。
次に、低温飼育下で発現量が増加するコイ筋肉の水溶性タンパク質55kDa成分がミトコンドリアATP合成酵素のβ-サブユニットであることを明らかにし、その発現量が30℃馴化コイに比べて10℃馴化魚で約2倍高いことを示した。さらに、このタンパク質の発現は転写レベルで制御されていることを明かにした。
また、霞ヶ浦から周年コイなどの種々の魚類を採取し速筋筋原線維Mg^<2+>-ATPase活性を測定したところ、11月に最高値を、その後徐々に低下し6〜7月に最低値を示した。一方、血漿中のチロキシン濃度は夏に高く、冬に低い値となり、水温および筋原線維Mg^<2+>-ATPase活性と相関関係を示した。
また、電位感受性プローブによる蛍光イメージングを用いてATP生成の源である魚類培養細胞ミトコンドリア膜電位測定法を確立した.さらに本法を用いて,温度適応に応じてミトコンドリア膜電位ポテンシャルエネルギーの変化を評価した。
【研究代表者】