東南アジアにおける蚊媒介性感染症の流行を左右する環境の定量的評価
【研究分野】寄生虫学(含医用動物学)
【研究キーワード】
マラリア媒介蚊 / 日本脳炎媒介蚊 / デング熱媒介蚊 / 東南アジア / 森林 / 稲作農村 / 都市化 / 環境変化 / マラリア媒介
【研究成果の概要】
自然・社会環境の異なる3ヶ国4地域を調査地区に定め,山間部では森林環境とマラリアの流行,マラリア媒介蚊の発生の関係を,平野部では日本脳炎ウイルスの浸襲状況と媒介蚊の役割を生態学的アプローチで解析した。
北タイ山間部では、森林が保全されているとマラリア媒介蚊(Anopheles minimus)が減少せずマラリア流行も持続することを示唆した。森林保全とマラリア防除の自己矛盾を指摘した。インドネシアのロンボク島でも沿岸より背後の山岳部のマラリア流行が深刻なことを明らかにした。媒介蚊はAnopheles balancensisで暗い森林内に生息することを確かめた。この蚊は人嗜好性が強く日没後数時間内に屋外で吸血する習性が強かった。就寝時の蚊帳使用に頼る感染防除の限界が明らかとなったので、空間忌避剤による就寝前屋外談笑時の吸血回避効果を評価した。ベトナムビンフック省山間地の主要ベクターはAn.dirusであった。原虫保有状況、媒介蚊発生量とも分布に集中傾向がみられたものの重なりはあまり認められなかった。
ベトナム稲作農村地域における日脳疫学調査ではCulex gelidusが発生源の近さから日脳伝播に重要な役割を果たす可能性が示唆された。ELISAによる吸血源の同定より同蚊の吸血パターンはCx.tritaeniorhynchusと酷似することが判った。また、ブタと蚊での感染が年中通じて起こっていることを確かめた。未知のJEV様ウイルスも見つかり,NamDinhウィルスと名付けられた。
【研究代表者】