その場構造解析とダイナミクス制御で実現する硬質ポリロタキサン材料の機能創成
【研究キーワード】
ポリロタキサンガラス / 放射光X線ナノビーム / バルジ試験 / 構造物性相関 / 接着 / シクロデキストリン / ホスト-ゲスト相互作用 / 気体分離膜 / 副分散 / 薄膜化 / 包接率 / X線回折 / 分子配向 / 分子設計 / 環状分子プローブ / 粘弾性緩和 / ダイナミクス / ポリロタキサン / 界面 / 放射光X線 / 分離膜
【研究成果の概要】
ポリロタキサンガラスを気体分離膜として用いるために、適切なアシル置換基を環状成分に導入したポリロタキサンの溶媒キャストによって、厚み10μm程度の薄膜化に成功した。そこで、環状成分と軸高分子の比(包接率)が異なる種々のアシル化ポリロタキサンを合成し、気体分離性能と薄膜の力学物性を評価した。包接率が下がり軸高分子の割合が大きくなるにつれて、窒素に対するCO2の透過性が上昇し、30倍程度の高い選択性を示すことが明らかになった。一方、力学物性はバルジ試験により評価し、ヤング率は減少してより大変形が可能になったが、包接率の高い膜であっても降伏を示す延性材料であった。さらに、膜厚850 nmでも自立して降伏を示す膜が得られた。また高い気体分離能はCO2の膜内への高い溶解性に由来することも明らかとなり、他の高分子分離膜にはない軸高分子の高い運動性による効果が表れている可能性も示唆された。
また、ポリロタキサンガラスに特有の軸高分子の運動性を制御するために、ポリブタジエンを主鎖骨格とするポリロタキサンガラスの合成にも初めて成功した。この軸高分子を臭素化し、その前後のポリロタキサンガラスの物性を比較したところ、副分散に顕著な違いが見られた。臭素化前は、環と軸が相分離した状態での軸分子がミクロブラウン運動していることが示された。一方、臭素化後には既存のポリロタキサンガラスと同様の副分散が見られたが緩和強度は非常に弱かった。NMRからはシクロデキストリンの環の内側のプロトンと軸高分子の臭素原子との強い相互作用が示唆された。この環と軸との相互作用により、相分離は阻害されたが、同時に軸高分子の運動性も阻害されたと考えられる。この成果は、環内部での軸高分子との相互作用により副分散とそれに伴う力学物性をも制御できることを示すものであり、この材料に特有の分子設計指針の一つが実験的に示されたと言える。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小椎尾 謙 | 九州大学 | 先導物質化学研究所 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
星野 大樹 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 放射光科学研究センター | 専任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)