先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応:大気進化の推定
【研究分野】岩石・鉱物・鉱床学
【研究キーワード】
大気の進化 / 鉱物-水-大気反応 / 風化 / 電子顕微鏡 / 酸素 / 二酸化炭素
【研究成果の概要】
地球表層における鉱物-水-大気反応は、その結果として、風化した岩石に大気進化の情報を含んでいる。この相互作用は現代、先カンブリア時代とも継続的に起こっているが、大気組成の差ににより、風化岩石には鉱物学的・化学的に異なる二次鉱物を形成されるはずである。ところが先カンブリア時代の風化岩石は、風化後例外なく変質作用を受けているため、実際の鉱物-水-大気反応の情報が消されており、その再現・推定は困難になっている。従来のバルク試料からの情報に鉱物のミクロ或いはナノメーター領域での情報を加え、先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応を解析し、30-20億年前の大気中の二酸化炭素、酸素の濃度(範囲)を明らかにすることを目的とした。主な成果は:(1)25億年前に風化を受けた花樹岩から、Ce(3+)を多く含むrhabdophaneを発見した。バルク分析とも合わせて、溶液中でCe(3+)がLa(3+),Nd(3+)と同様の挙動をしたことがわかり、25億年前に風化は非酸化的な雰囲気下で起こったと結論した。(2)25億年前に風化を受けたMafic rockの風化帯におけるFeの2、3価の挙動から、当時の風化が低酸素下で起こったことがわかった。(3)低酸素下でのbiotitcの風化実験からFe, Mgの含有量に依存せず、二次鉱物としてvermiculiteが一単位層毎にbiotite中に形成すること(風化ではchloriteもbiotiteと同じ二次鉱物を同じ形式で形成することがわかっている)、(4)vermiculiteの熱水実験から、風化帯の埋没後、vermiculiteはbiotiteに変換することがわかった。(5)chloriteの微細構造の変化を高分解能電子顕微鏡で風化帯全域にわたって調べた。原岩では純粋のchoriteが、風化時に一部、一層の単位毎にvermiculite化し、風化帯の埋没後、続成作用あるいは弱い熱水変質作用により、そのvermiculiteがbiotite化したという結論を得た。(6)30億年前の海嶺付近の玄武岩の熱力学的計算から、当時の二酸化炭素がモデル計算値より一桁近く多いことが予想された。我々の研究で、先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応とその後の変質化が一部再現でき、また、大気中の二酸化炭素、酸素の濃度が実際の岩石を使用して推定された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小暮 敏博 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】15,400千円 (直接経費: 15,400千円)