空気力を受動的かつ積極的に利用するモーフィング翼型の設計手法の構築と実証
【研究キーワード】
モーフィング技術 / 空気力学 / 構造力学 / 航空機設計 / モーフィング翼 / 風洞試験技術 / 流体構造連成解析 / 低レイノルズ数流れ
【研究成果の概要】
本研究の目的は、申請者らが提案する「空気力を受動的かつ積極的に利用する新しいモーフィング翼型」について、先行研究で得た変形特性ならびに空力特性を踏まえ、より空力・構造の観点で優れた形状・機構を提案することである。以下に、2021年度に取り組んだ3項目についてまとめる。
1)翼厚比12%の翼型を基準とした新しいモーフィング模型の製作に取り組んだ。従来は、柔軟な素材からなる翼上下面とベアリング接続したスポークからなる機構を実現するため、比較的翼厚比の大きい翼型(翼厚比24%)を採用していた。新しい模型は柔軟な素材(ゴム状)の印刷が可能な三次元プリンタを導入したことにより、柔らかい機構が一体製作され、模型の製作精度も向上した。新しい模型を用いた風洞試験を通じて、意図する空力性能向上及び変形特性を有することを実証した。
2)研究室が所有する風洞を用いた試験方法の向上に取り組んだ。以前の風洞試験計測の結果では、翼型が発生させる揚力の傾き(揚力傾斜)が理論値と大きく異なっており、その原因が特定できていなかった。精密な金属製模型を製作し風洞試験を行った結果、主要因が風洞壁補正で説明でき、副次的な効果として三次元プリンタによる製作に伴う表面粗さが影響していることが明確になった。この知見は、数値解析による受動的モーフィングデザインにおいて必須となる、風洞試験と比較において重要なものである。
3)表面圧力係数計測模型を用いた表面圧力計測やオイルフローを実施し、基準となるNACA0012翼型(剛体)周り低レイノルズ数流れの理解を深めた。翼表面における剥離(層流剥離泡)や失速パターンが明らかになり、既往研究の結果と定性的に一致した結果が得られ、風洞計測技術が向上した。また、製作した後縁受動的モーフィング翼の空力性能の向上は、層流剥離泡の消失に伴うものであることが予期される結果が得られた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
李家 賢一 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
横関 智弘 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)