深層土壌の物理性が物質とエネルギーの循環に及ぼす影響に関する研究
【研究分野】農業土木学・農村計画学
【研究キーワード】
深層土壌 / 土壌物理性 / 湿原 / メタン放出 / ゼロフラックス面 / 雨水浸透 / 透水係数 / ベイドスゾーン / 土壌の物理性 / メタン / 雨水浸透処理 / 沖積土 / 地温 / ガス / 微生物 / 土壌構造
【研究成果の概要】
1.深層土壌中にも微生物が多数存在し、物質代謝や物質分解を行ってガス状物質を発生させていること、特に、カーボンソースに起因するCO2やCH4が深層土中でも発生することを実証した。特に、湿原深層土からのメタン発生量は予想外に多く、その大気への放出メカニズムの解明が極めて重要であることを示唆した。
2.ゼロフラックス面(降雨浸透後の土壌水において、乾燥した地表面へ向かう上昇移動と余剰水の排水のために下方へ向かう下降移動との分水面)が、常に深層へ向かって下降移動しているという従来の認識を覆し、ゼロフラックス面は降雨後3日程度まで下降した後、突如消滅するという、土壌水の再分布メカニズムを発見した。ゼロフラックス面消滅による水分移動については、塩分輸送の面からも更なる検討を要することがわかった。
3.深層土壌中への雨水浸透処理について、民間で進められていた経験的な技術について、科学的な解析を行い、降雨強度と深層土の物理性との関係を元に、必要な浸透槽サイズを設計する手法を提示した。この研究において、ゲルフパーミアメーターの解析法を雨水浸透槽に応用するという画期的な手法を用い、信頼性の高い設計手法に結びつけた。この手法につき、現在、佐々木毅(元)東大総長とエンライトコーポレーション(株)と共同名義で特許を出願中である。
4.深層土壌の透水性を人工的に増大させるために、産業副産物や都市廃棄物から算出されるガラスカレットを土に混入する土壌改良法を検討し、高等学校の運動場のように限定された土地ではその効果を期待できることを実証した。ただし、ガラスカレットの粒子サイズを限度以下に細かくすると、ガラス構成成分の溶出による地下水水質への影響が懸念されることも、データを提示して具体的にアドバイスすることができた。
5.深層土壌中の微生物を活性化させて汚染物質を浄化する技術、すなわちバイオベンディングの基礎的研究を行い、火山灰土壌の中では期待されたほどの浄化が得られなかった。一方、砂質土の中では浄化効率が高いことがわかり、これは強制通気条件下での微生物と空気の接触性に差があるためであるとの認識を得た。
【研究代表者】