外科医の意志通りに動くマイクロサージェリーハンドの開発
【研究分野】知能機械学・機械システム
【研究キーワード】
外科手術 / 骨堀削 / 力センサ / 画像処理 / 骨掘削
【研究成果の概要】
本研究の目的は、執刀医の疲労が大きい、顕微鏡下のマイクロサージェリーの骨削り・脂肪切開作業において、執刀医の意志を支援する外科医主導型のハンド、すなわち「マイクロサージェリーハンド」を開発することである。これは、力変換部・手術用具・画像処理部・多関節腕の4つの機構要素から成る。
力変換部は、操作力を歪ゲージ式の力センサで検出し、それに比例した手術用具に伝わる微小力を、圧電式の力センサで検出しながら、ピエゾ素子で発生する要素である。たとえば1Nで操作された力を±5%の精度で1/10に縮小して、30msの時間遅れで手術用具に伝えることができた。さらに、たとえば2N以上の過大力が働いた場合に手術用具が数mm後退するフェイルセーフ機構が付与されている。また、手術用具として、刃頂角が45度のダイヤモンドからなる切削刀などを試作したが、これらでモルモットの中耳の死骨を削ると、微小力0.1N程度、すくい角45度程度で薄く削ることができた。また、画像処理部では高速画像処理装置を用いて、手術用具の変位・姿勢を1mmの分解能でビデオレートで検出できた。多関節腕は力検出部を固定するものであるが、今回は操作者の腕と固定した。緊急時は操作者とともに退避できる。
このように当初の要求機能を満足する機構要素を設計・試作したが、実際の生骨を削ると全体機能は必ずしも満足できなかった。生骨は湿っているけれど硬い軽石のようで、工具の運動軌跡に沿って削るというより、叩き割る、またはこそぐ、という作業で骨を除去した。また、多関節腕は、固定した場合の剛性が1mN/μm程度と小さく、ピエゾ素子の30μmの伸長分を吸収し、力発生機能が発揮できなかった。金属加工と異なる切除メカニズム、長い伸長を有する力発生素子(たとえば10mmで1N)などの開発が今後の研究課題である。
【研究代表者】