粉末焼結積層造形法による高代謝臓器再生用担体の造形および培養に関する研究
【研究分野】生産工学・加工学
【研究キーワード】
積層造形 / ラピッドプロトタイピング / 再生医療 / 瀬既往造形
【研究成果の概要】
代謝速度の速い組織の再構築には,担体内に細かく分岐した流路ネットワークを配置する必要があり,このような構造を持った担体の製作に粉末焼結積層造形法を利用した.本加工法には,材料選択の自由度が高い一方で微細性が低いという問題点があったが,焼結用のレーザのスポット径を市販造形装置の1/2程度に絞ることができる造形装置を開発し,さらに高い空孔率を得るために導入する水溶性フィラの特性が造形物の微細性に与える影響を評価し,その結果を造形状に反映させることによって,従来の造形装置で作製した場合の1/2程度の微細構造を有する担体を製作することに成功した.この担体の内部には最小で500μmの直径を有する微細流路ネットワークが配置されており.このことにより,培養密度の4倍程度の向上が期待できる.レーザスキャナのビーム径を小さくすると,ビームのスキャン可能な範囲が縮小し,結果として造形可能な造形物の大きさが小さくなる.そこで,レーザスキャナ全体をシフトし,造形範囲を拡大する機構とシステムを試作した.この結果,露光範囲を50mm×50mmから,150mm×150mmまで拡大し,大型スカフォールドの造形にも対応可能とした.この装置を用い,実際に流路を有する多孔質体の造形にも成功した.
また,担体のスケールアップに伴う酸素供給不足の解消を目指し,ナノカプセル化ヘモグロビン(人口赤血球)を利用する可能性を検討した.肝前駆細胞の培養において試験をしたところ,酸素供給は一定の向上が得られたものの,遊離ヘモグロビンによって引き起こされる毒性の問題を完全に排除することは困難であるという結論を得た.また,流路が配備された担体を用いてヒト肝ガン細胞の灌流培養を行ったところ,細胞の増殖と肝機能の発現において顕著な向上が得られた.さらに,細胞の増殖が流路からおおむね200μmの距離で発生していることから,流路からの最大の距離が200μmとなるような設計が必要であるという知見が得られた.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
酒井 康行 | 東京大学 | 生産技術研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】16,640千円 (直接経費: 15,200千円、間接経費: 1,440千円)