ポルフィリン配位構造の特性探求と医薬化学への応用
【研究分野】医薬分子機能学
【研究キーワード】
シトクロムP450 / 一酸化窒素 / NO合成酵素 / チオレート / ポルフィリン / 酸化 / 水素結合 / 酵素阻害剤 / ヘムーチオレート / 活性腫 / 過酸 / ヘム / NO / ペプチド / アイソザイム / 阻害剤 / 発現系
【研究成果の概要】
1)ヘムの反応特性に関し開発した唯一の安定型ヘムーチオレート錯体(SR錯体)を開発してきたが、この配位構造と一酸化窒素(NO)との配位化学を世界に先駆けて詳細に検討することに成功した。SR錯体はNOと安定で可逆的な錯形成を行いその錯形成定数において顕著な軸配位子効果が認められた。本研究でチオレート配位であることにより鉄へのNO配位力は他の錯構造より大きく弱められていることがわかり、本酵素の生成物阻害に関する議論に対して強い示唆を与える結果である。
2)シトクロムP450において軸配位子部のNH-S水素結合の存在が確認されている。このNH-S水素結合を有する活性中心モデルを合成し、水素結合を有さないモデルとの比較を行った。その結果、水素結合を受けることにより鉄一硫黄結合距離が短くなること、酸化活性種の求親電子性が高まることを見いだし、ヘムーチオレート構造の触媒機能に及ぼすNH-S水素結合の効果を初めて明らかにした。
以上1)、2)よりシトクロムP450、NO合成酵素で興味を持たれながら未解明であった構造と機能の関連について重要な点を明らかにできた。
3)P-450を強く配位阻害する新規骨格をSR錯体をプローブとし見いだし,新たな医薬創製に役立てる事を目的に,特に有効な阻害剤のないNOSの活性を制御する化合物の探索を行い,高い選択性を有する阻害剤の開発に成功した。ヒト酵素での高い選択性と活性を有する阻害剤を求めて構造活性相関を行い、その結果ジペプチドであるL-イソチオシトルリニルL-アミノ酸がヒトiNOS選択的に酵素阻害を起こすことを見いだした。これによりヒトiNOSの基質結合部位のC末部位に一定の疎水基親和性のある部位が存在するという本研究者の作業仮説を裏付ける結果が得られた。本知見は有効なNOS阻害に基づく治療薬設計の一指針になると考えられる。
【研究代表者】