天然タンパク質の集合制御に基づく高熱伝導化と熱伝導製材料への展開
【研究キーワード】
生体高分子 / タンパク質 / 自己集合 / 熱伝導 / 熱拡散率 / 自己集合化 / 熱伝導性材料 / 構造制御 / 遺伝子工学
【研究成果の概要】
エネルギーを消費して機能する機器やデバイスにとって、許容限度温度以上への上昇を抑える放熱は、重要な技術課題となっている。本研究では、天然由来のタンパク質を素材とした集合体の熱伝導性を評価し、高熱伝導化を図るとともにその機構を分子レベルで理解するすることを目指した。
タンパク質素材としてまず安全で大量生産も可能なシルクタンパク質に着目し、その集合構造と熱伝導性の相関を評価した。有機溶媒ならびに超音波処理によりカイコの繭糸の奥深くに位置するシルクタンパク質からなるナノ繊維を抽出した。この際、超音波処理の時間や強度により繊維長の異なるナノ繊維を調製した上で、それぞれ流動配向法により配向様式の異なる集合体(フィルム)を調製した。得られたフィルムそれぞれを温度波熱分析法により厚さ方向の熱拡散率を評価した結果、配向性の高いフィルムの場合には無配向フィルムと比較して3倍程度高い値を示した。この際、用いるナノ繊維長がより短くなった場合には熱拡散率が低下する傾向が見られ、ナノ繊維自身の集合構造に加え、ナノ繊維を構成するシルクタンパク質の集合構造のいずれもが熱拡散率に寄与していることがわかった。一方で、シルクフィブロインを抽出して水溶液から流動配向法によりフィルムを調製して同様に実験した結果、その熱拡散率の値は、ナノ繊維から集合化させた場合と比較して、より低くなることが示唆された。
また、他のタンパク質素材としてリゾチームから結晶を調製し、構造の制御されたタンパク質結晶の熱拡散率測定も進めている。タンパク質結晶のサイズは数百マイクロメートル程度とサイズが小さく、市販の測定装置では測定が困難であったため、装置を自作して測定を進めた結果、熱拡散率のオーダーは10-8 m2 s-1であることが示唆された
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)