TEMPOによるセルロースの酸化反応解析
【研究分野】林産学
【研究キーワード】
セルロース / 酸化 / TEMPO / セルラーゼ / 機能化 / 生物分解性 / 表面改質 / 選択性 / セルロース誘導体 / CMC / 再生セルロース / 生分解性 / キチン
【研究成果の概要】
1. 天然セルロースを一旦溶解して調製した再生セルロース、あるいは17.5%水酸化ナトリウム水溶液で膨潤-洗浄したマーセル化セルロースを出発物質とし、水溶性の安定ラジカルであるTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペジニル-1-オキシラジカル)を触媒量添加して、臭化ナトリウムと次亜塩素酸で酸化処理を行うことにより、セルロースのC6位の水酸基のほとんどすべてが選択的に酸化されてカルボキシル基に変換した水溶性ポリグルクロン酸(セロウロン酸)を定量的に調製することができた。2. 綿セルロース、針葉樹漂白クラフトパルプを58%ロダン塩(チオシアン化カルシウム)水溶液に加熱溶解し、水中で再生させた再生セルロースゲルを出発物質として用いることにより、高重合度のセロウロン酸を効率的に調製することができた。
3. 得られたセロウロン酸は市販の粗精製セルラーゼを室温で1ヶ月程度処理することにより、セロウロン酸オリゴマーからグルクロン酸にまで加水分解的に低分子化された。これは、セルラーゼ中に不純物として含まれている酵素の作用による。従って、新しい水溶性の多糖類であるセロウロン酸の生分解性を確認した。これは、従来の水溶性セルロース誘導体では期待できなかった特性である。
4. 天然セルロースをTEMPO触媒酸化したところ、水溶性のセロウロン酸は得られなかったが、セルロース表面にカルボキシル基を微量導入することができた。この表面酸化パルプから紙の調製した場合、パルプ表面のマイナスの表面荷電を強めることになり、抄紙におけるサイズ剤、紙力剤などのウェットエンド添加剤成分を効率的に定着する機能が付与された。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽的研究
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】1,700千円 (直接経費: 1,700千円)