コールド・クル-シブルを用いた液体金属および合金の放射率の測定
【研究分野】金属生産工学
【研究キーワード】
コールド・クル-シブル / 放射率 / 液体金属 / 銅 / 金 / 銀 / 放射機構 / モデリング / 近赤外分光放射率 / 貴金属 / モデル / 液体合金 / 金属 / 合金 / 液体 / 分光放射率
【研究成果の概要】
液体金属の放射率の値は、放射温度計の入力データとして、また、材料プロセッシングの伝熱過程に関する数学モデルの入力データとして重要である。本研究は、液体金属及び合金の放射率を温度及び波長の関数として統計的に測定すること、また液体金属の放射機構を考察し、放射率値を予測できる理論的モデルを構築することを目的として行った。
まず、通常の抵抗加熱炉と光学系を組み合わせた放射率測定装置を作製し、溶融銅の近赤外分光放射率の測定を行った。放射率値は、融点付近においては波長に依存せず約0.55と測定された。しかし、この値は、文献値(約0.1)と比較して大きく、炉心管壁からの光の影響やるつぼによる試料の汚染の影響を受けていると考えた。
これらの問題点を解消するために、コールド・クル-シブルを用いた測定装置を作製し、融点における固体及び液体銅の分光放射率を可視波長域550〜750nmで測定した。放射率の値は液体のほうが大きく、また、いずれの場合も波長が長くなるにつれ急激に小さくなり、液体銅で0.30〜0.10、固体銅で0.25〜0.06の範囲にあった。文献値の多くは本研究結果の固体と液体の値の中間に位置し、本測定法の妥当性が確認できた。ついで、融点における貴金属(金、銀、銅)の固体及び液体の分光放射率を近赤外波長域1000〜2500nmで測定した。いずれの金属においても、放射率値は液体のほうが大きく、固体、液体ともに波長が長くなるにつれゆるやかに減少し、たとえば液体銅では0.076〜0.060、固体銅では0.043〜0.033の値を示した。
以上の結果に基づいて放射機構を考察し、光の放射は、測定波長域においては、電子-フォノン、電子-電子及び電子-表面散乱とバンド間遷移によって起こると結論した。また、これらのファクターを考慮したモデルを構築したところ、測定結果を合理的に再現することができた。なお、本研究で作製した放射率測定装置は、他の金属や合金に適用することも可能である。
【研究代表者】