熱量と電気分極の測定による結晶,ガラス,およびガラス性結晶の緩和現象の研究
【研究分野】物理化学一般
【研究キーワード】
ガラス転移 / エンタルピー緩和 / 分極緩和 / 1-プロパノール / イソシアノシクロヘキサン / フラーレン / 電気分極緩和 / 熱測定 / 電流測定 / 熱容量 / 電気分極カロリメ-タ- / 緩和現象
【研究成果の概要】
電気分極とエンタルピーを同時に測定する電気分極カロリメーターを設計、製作した。カロリメーターとしての性能はヘリウム温度領域から常温にいたる温度範囲で0.1%より良い精確度で熱容量を測定するものである。また試料容器内部に1.8mm間隔で正負の電極が備えられており試料に電場を与えることができる。電極は熱伝導のよい銅でつくられているので試料に加えられた熱エネルギーを速やかに試料全体に均一化するための均温板としてもはたらく。外部電場を与えつつ試料を冷却すると試料はそれに応じた電気分極をもってガラス化する。ガラス状態においては分子運動が凍結されるので分極も一定の値にとどまる。電場を取り去って温度を上昇させるとガラス転移付近で分極が消失するに伴い脱分極電流が流れる。その経時変化、温度変化を観測することによって分極緩和を、また断熱条件下での温度変化からエンタルピー緩和を測定する。1-プロパノールとイソシアノシクロヘキサンのガラス状態について測定を行い、緩和が単一指数関数で表現されないことを見出した。
最近発見された炭素の同素体フラーレンC60の低温熱容量を測定しこの物質が86Kにガラス転移をもつガラス性結晶であることを見出した。ガラス転移温度付近における緩和は単一指数関数で例外的によく表現されることがわかった。これは立方結晶という高い対称性と球に近い分子の形によるものであろう。活性化エンタルピーは21kJ/molであった。ガラス転移における熱膨張係数の変化から、分子配向の励起が体積減少を伴うという特異な性質が結論され、この物質の分子間相互作用について新たな知見えられた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山室 修 | 大阪大学 | 理学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1991 - 1992
【配分額】6,700千円 (直接経費: 6,700千円)