分子シャペロンを利用した次世代ナノデバイスの創製
【研究分野】合成化学
【研究キーワード】
シャペロニン / ヒスチジン / 銅イオン / 酸化 / ナノクラスター / ATP
【研究成果の概要】
シャペロニンGroELのサブユニットにヒスチジン六量体を導入した変異体を調製した。導入位置は、内部空孔に位置するC末端とし、ヒスチジン六量体が空孔内に集中することで、金属イオンを空孔内部に集積化することを期待した。
調製した変異体(His-GroEL)がHis-tag精製用カラムにほとんど吸着されなかったことから、ヒスチジン六量体が外部に露出しているのではなく、空孔内に格納されていることが強く示唆された。さらに、TEMおよび光散乱による解析の結果から、His-GroELは、天然のGroELと同様に筒状の14量体であることが分かつた。この変異体に、二価の銅イオンを加えたところ、1つのHis-GroELあたり、およそ10原子の銅イオンが取り込まれることが分かった。加える銅イオンの量を検討した結果、ほぼ10当量加えると、そのほとんどがHis-GroELに取り込まれることが分かった。天然のGroELでは、取り込まれる銅イオンの数がほぼ1原子程度であることから、10個の銅イオンがヒスチジン六量体に配位することで、空孔内に集積化されたと考えられる。さらに、銅イオンを集積化したHis-GroELは、アスコルビン酸の酸化を効率的に進めることが分かった。これは、シャペロニンに触媒活性を与えた最初の例である。
以上のように、シャペロニン変異体His-GroELを利用して、新規機能材料の構築に成功した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)