地理的多様性と地域格差問題の再定義に関する研究
【研究分野】人文地理学
【研究キーワード】
地域格差 / 所得格差 / 健康格差 / 人口移動 / 経済構造 / 地域政策 / 国土計画 / 最低賃金 / 健康水準 / 世帯所得 / 労働市場 / 地域計画 / 教育格差 / 地域情報 / 産業構造 / 地方創生 / 世代格差 / 就業構造 / 貧困問題
【研究成果の概要】
今日の日本では、東京一極集中や地方経済の衰退が進んでいる。複雑な地域格差現象を正しく把握するには、人口や産業の地理的分布の偏りを指す「規模の地域間格差」と、人口当たり所得で見た地域差に注目する「水準の地域間格差」という概念の再定義が重要である。低所得地域から高所得地域への人口移動は、後者を縮小するが前者の拡大を招くというジレンマが存在する。地域格差の長期的変化と直近の動向を分析した結果、格差は所得水準だけでなく、教育機会、職業選択、家族形成、健康状態に及ぶこと、学歴や所得など社会経済属性に選択的な人口移動が、地域の人口構成の変化を通じて地域格差の再生産をもたらしていることが明らかになった。
【研究の社会的意義】
格差をめぐる論争には、その実態が「どうなっているか」という事実認識のレベルと、目指すべき社会が「いかにあるべきか」という規範的議論のレベルが存在する。学術的な実証研究では、格差現象の客観的な分析が先験的な価値判断によって影響されないよう警戒しなければならない。地域格差の概念や定義を明確にし、その実態を正確に把握した上で、何が是正すべき格差なのか、何が尊重すべき地域の多様性なのか検討することが求められる。本研究は、地理学をベースに経済学や地域計画学など学際的な視点から、実証的な分析をおこない政策的な議論を深める点に意義がある。
【研究代表者】