環境資源の持続的利用におけるコモンズ的手法に関する研究
【研究分野】環境保全
【研究キーワード】
コモンズ / 資源配分システム / 入会林野 / 持続的利用 / 資源管理 / 取引費用 / 環境資源 / 効率性分析 / 社会規範
【研究成果の概要】
1.環境資源の持続的利用という観点から、コモンズ型資源配分システムの作動環境の分析とその成果の評価を行った。事例研究として、日本でのコモンズ型資源管理システムである入会林野を対象として、森林資源管理主体の現状を明らかにした。
2.コモンズ型森林資源管理では市場システムや計画システムと比較し、持続的資源利用には各システムでの管理主体間で、役割分担が不可欠であることを明らかにした。近年の制度分析のアプローチとして、取引費用論による制度の効率性比較の研究が進められている。これにもとづき森林資源管理において、各資源管理システムでの取引費用を明らかにした。
3.環境資源のコモンズ型管理に関する代表的な研究者としてOstromがあげられる。0strom(1990)のGoverning the Commonsではコモンズ型資源管理が機能しない場合として、社会経済状況の急速な変化、環境の急速な変化、集団構成員間の格差の存在という条件をあげている。
4.農業集落カードの農業集落を対象に定量分析を行い、入会集落の判別分析・主成分分析を行った。これにより、広島県における入会集落では、入会林野近代化への整備、林業の衰退から、現代においては、コモンズ的資源管理の主体を担っていないことが明らかになった。また、入会林野の近代化整備後の資源管理主体の一つと考えられる生産森林組合も林業の衰退から資源の維持管理が困難になっていることを明らかになった。
5.広島県における入会集落の分析から、上記の0stromがあげているコモンズ型資源配分システムの機能しない条件が当てはまることを明らかにした。広島県の事例研究の結果として、自然集落による資源管理はもはやなされておらず、現代的なコモンズ型資源管理をとらえるアプローチの必要性が明らかになった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)