病原微生物のソーストラッキングを用いた公共財としての水の安全確保
【研究分野】土木環境システム
【研究キーワード】
水の安全 / 病原微生物 / ウイルス / 遺伝子 / 指標微生物 / 紫外線 / 銀 / 消毒 / 上水道 / ミクロキスティン / レジオネラ / 大腸菌 / PCR / 安全性 / 光回復 / RNA
【研究成果の概要】
総合的な病原微生物対策のために必要ではあるが未解決の課題群に取り組み、以下の成果を上げた。
紫外線照射により不活化した大腸菌の海水中での挙動を解明するため、NaCl 溶液、MgCl2溶液、CaCl2 溶液中における光回復の程度を調べた。その結果、全ての溶液中で、高い塩濃度では光回復が抑制された。光回復抑制の機構は、細胞膜内外における陽イオンの電位差が浸透圧を生み出し、光回復酵素の生成が阻害されたからだと考えられる。
紫外線消毒の効率を上げるための試みとして、銀の併用によるウイルスの不活化効果の測定を行った。銀イオン0.05ppm 存在下における低圧紫外線による不活化では、大腸菌およびファージQβは銀存在下で不活化速度が大きくなり紫外線と銀の相乗効果が見られるが、ポリオウイルスおよびマウスノロウイルスに対しては銀の影響は見られなかった。
湖沼等において発生する藍藻類の異常増殖を抑制する新たな手法としての中圧及び低圧の紫外線照射処理において、藍藻類が生産する毒素ミクロキスティンの放出に関する研究を行った。その結果、紫外線照射によって藻類が破壊される影響よりも藻類が減少する影響が卓越し、水中のミクロキスティン濃度の上昇が抑制されることを見出した。
水道の給配水管路等において形成される生物膜などで増殖するレジオネラ属菌およびシュードモナス属菌に対して、銀を用いた消毒を試みた。その結果、菌体あたりに吸着する銀の量をパラメータとすることで消毒効果を定式化することが可能であることを見出した。
ウイルス粒子の選択的な濃縮を行う手法としてMgを用いる方法が適していることが分かった。また、ノロウイルスの塩素消毒耐性は他の腸管系ウイルスと同等以下であり、十分な塩素消毒が施された配水システムにおいてはノロウイルスが感染力を保ったまま末端給水栓まで到達する可能性は低いことが示唆された。
【研究代表者】