分権改革下における地方教育行政ならびに学校管理運営過程の変容に関する実証的研究
【研究分野】教育学
【研究キーワード】
分権 / 教育改革 / 地方教育行政 / 学校管理 / 教員管理 / 高知県 / 犬山市 / 東京都 / 教育行政 / 地方分権 / 分権化
【研究成果の概要】
分権改革下において独自の教育改革施策が顕著に進められている自治体として高知県と愛知県犬山市の調査をおこなうと同時に、日本教育学会東京地区研究グループと協同して東京都の事例についても検討をおこなった。
自治体教育改革の今日的な動向を、3つのタイプに示すと以下の通りである。
(1)参加・共同型の改革:高知県の「土佐の教育改革」
高知県では「学力問題」などを中心とした公立学校不信が県民の中に広がっていたとともに、その原因の一つでもあった県教育委員会と教職員組合などとの間の対立構造が、信頼回復のための有効な施策の形成と実施を困難にしていた。そうした中で、1996年春から始まった「土佐の教育改革を考える会」は、自民党をはじめとする県議会各会派、5つあるすべての教職員組合、公立小中高各PTA連合会など、対立する諸グループを含む県民各層から選ばれた人々が、公開の場で徹底的な論議を交わすことを通して、改革課題と施策の骨格についての合意がつくられていった。
(2)NPM型のトップダウン改革:東京都の教育改革
東京都の教育改革は、都立高校の統廃合・再編改革の始まる1997年前後から次第にその骨格が顕在化してきた。そこでは、統廃合と「新しいタイプの学校」づくりを中心とした都立高校再編、教員人事考課・主幹制導入・「学校経営計画」などの学校経営・教員人事管理改革、「こころの東京革命」や国旗・国家の取扱などの保守主義的諸施策などが柱となっている。
(3)県教育行政からの自立性確保と「学びのための学校づくり」:愛知県犬山市
犬山市の改革は、「学びのための学校づくり」(2001年度〜)を軸に、一方で教員人事などの面での市教育委員会の県教育行政からの自立性の確保をめざすとともに、他方で少人数学級をめざした少人数授業とそのための自主教材(副教本)づくりや独自の教員研修体制などによる教員の力量形成を柱としてすすめられている。
分権化のもとでの自治体教育改革では、公立学校コントロール・システムの再編にともない、その正統性回復の課題が問われている。
【研究代表者】