気候変動を考慮できる動的水食モデルの構築に関する研究
【研究キーワード】
気候変動 / 水食 / 数値予測 / ゲリラ豪雨 / 粗放的土地管理 / GIS / WEPP / GeoWEPP / 農地保全 / 土壌保全 / プロセスモデル / 降雨流出 / 土地利用 / 土壌侵食 / 中山間地
【研究成果の概要】
水食予測のために,対象スケール・問題に応じてWEPP,GeoWEPPを使い分けるが,この時,降雨,土壌に関するモデルパラメータの日本への適応について,従来十分に考慮されていなかった.2020年度は,気象データについて農研機構の提供する 農環研シナリオ2017を用いて,現在および将来気象の統計値を整理し,WEPP,GeoWEPPに利用可能な気象データセットを構築した.また,短時間降雨特性について検討を行い,地域によって降雨特性が短時間高強度化する場合としない場合があることを明らかにした.土壌パラメータについては,室内人工降雨実験のデータから土壌パラメータを推定した.一方,既存の降雨流出データが得られる場合について,このデータから,対象値の土壌パラメータを推定する手法も構築し,要素試験で得たパラメータを用いるシミュレーション方法の構築ならびに,降雨流出データを用いたシミュレーション構築の二方法について,おおよその手法を整理した.また,特定地域の降水ならびに土砂流出データの収集を続けると共に,特に侵食による放射性物質の再分布が懸念される福島県について,シミュレーションに不可欠な地形データの整備をおこなった.
将来予測に関して,複数回のシミュレーションを行い統計的な議論をすることで予測結果の信頼性を高める必要があるが,WEPP, GeoWEPPといった大規模なモデルでは,これを自動化できないという問題があった.これについて,GEM-SAソフトウェアを用いるエミュレータを試作した.
また,地球惑星科学連合大会において,「H-CG29 原子力災害被災地の地域復興における科学者の役割」というセッションを主催し,農業農村工学会大会において,企画セッション「気候変動下の農地土壌保全を考える」を行い,イベントベースの水食予測の重要性について発信を行った.
【研究代表者】