観測手法の高度化と衛星画像に基づく内湾物質循環過程の精密再現モデルの開発研究
【研究分野】水工水理学
【研究キーワード】
東京湾 / 自動昇降式観測システム / 水質モニタリング / 数値モデル / 富栄養現象 / 環境予測 / モニタリング / セジメントトラップ / 有機物 / 生態系
【研究成果の概要】
東京湾をはじめとする富栄養化した内湾においては貧酸素水による底生生物のへい死や青潮等が問題となって久しい.貧酸素対策としては従来から流入負荷の削減,覆砂等が主に数値モデルを用いて検討されてきたが,それらの中には相反する結論が導かれている等,手法そのものの信頼性に大きな疑問が残されている.その最も大きな要因は有機物動態に関する連続的な観測情報が不足していることが挙げられる.そこで有機物生産の動態の詳細を把握するために昇降式係留系を用いた連続観測を行い,クロロフィルaを含む水質の鉛直分布の詳細を把握すること,およびリモートセンシングSeaWiFSの画像解析により表層クロロフィルa分布を得ることで,3次元的な有機物生産動態を把握し,これらに基づく信頼性の高い数値モデルを構築することを目的とした.東京湾湾奥に位置する京葉シーバースにおいて自動昇降式観測システムを立ち上げ,クロロフィルa,濁度,溶存酸素,濃度,水温,塩分計等の連続観測を実施した.同時にセジメントトラップを設置し,動物プランクトンや懸濁態有機物を含む,有機物沈降フラックスの時系列モニタリングを実施した.これらのモニタリングではいくつかのトラブルにより必ずしも十分なデータが蓄積できなかった面はあるが,改善策を抽出し対策を施したことでモニタリングシステムとしての完成度を高めることができた.これらのモニタリングデータに基づき,これまで開発してきた内湾流動・水質・生態系モデルの高度化を図った.さらに周年の現象再現が行えるよう,プログラムコードに対して東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータ向けのチューニングを施し,長期の現象再現が実用的な計算時間で可能となった.本モデルを用いたシミュレーションの結果,赤潮の発生,有機物の沈降,貧酸素化といった一連の水質劣化過程が再現され,またモニタリングデータを定性的にはよく説明できることが明らかとなった.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)