流れ・物質輸送・一次生産に着目した礫床河川の生態系基盤形成機構に関する研究
【研究分野】水工水理学
【研究キーワード】
礫床河川 / 栄養塩輸送 / 生物一次生産 / 付着藻類 / 土砂輸送 / 流域負荷 / 高水敷植物 / 土砂流出 / 流れ / 栄養塩 / 有機物 / 洪水 / 粒度分布 / 一次生産
【研究成果の概要】
本研究では,1.生物一次生産特性に関する室内実験,2.礫河原植物による栄養塩吸収特性に関する現地観測および室内実験,そして3.出水時の流域からの土砂・栄養塩流出特性に関する現地観測を実施した.
1.河川水内の一次生産者である付着藻類について,実験水路を用いて増殖実験を実施した.実験では,付着藻類をその体のつくりによって,糸状藻,非糸状藻に分類し,それぞれの光合成,呼吸速度,剥離特性および増殖過程を計測した.実験の結果,最大光合成速度,最大呼吸速度には有意な差は見られないこと,藻類の剥離率は摩擦速度がある一定の値を上回ると急激に増加すること,増殖の終期には糸状藻が優占する群落へと遷移することが明らかになった.
2.礫河原に生息する草本植物であるツルヨシを対象として,生長に関する現地観測および水耕栽培実験を実施した.観測の結果,水分供給の観点からは有利な位置に生息している高水敷上の水際付近において成長量が小さいことが示された.実験の結果,根の呼吸量は周辺土壌中の酸素量に関連しており,根が冠水すると呼吸量および栄養塩吸収量が低下することが明らかになった.
3.沖縄県石垣市の名蔵川を対象として土砂・栄養塩流出の現地観測およびシミュレーションを実施した.観測は河道内の複数の地点で洪水流の流速・水位・濁度・計測および採水を行い,採水サンプルに対しては,栄養塩濃度,有機物濃度,粒度分布の計測を行った.その結果と面源における土砂生産の比較試験の結果を用いて流域スケールで土砂動態のシミュレーションを行った結果,農地における営農形態を変更することによって約50%の土砂流出を削減できる試算結果が得られた.
【研究代表者】