空間の表象に関する宗教民俗学的研究
【研究分野】宗教学
【研究キーワード】
空間 / 表象 / 民俗宗教 / 巡礼 / 祝祭 / 観光 / 記憶 / 遺産 / 宗教学 / 民俗学 / 文化人類学 / 空間の表象
【研究成果の概要】
本研究は、空間の言説と表象が流通・消費される様相に注目し、生成され変動するコスモロジーの動態に関する研究を行った。研究対象を社会的・歴史的文脈の中で理解し、当事者の意図や観察者の状況への関与を重視して、厚みのある日常的実践の社会的過程を描き出すことに留意している。サブテーマとして、「祝祭」「巡礼」「観光」「交換」「記憶」を設定した。研究代表者は、鳥海山麓の山形県遊佐町でヤサラ人形を空間の表象として取り上げて、地域社会の人々が象徴を通して空間の意味を喚起し、機能させる過程を考察した。共同研究者の協力を得てテーマ別の比較研究も行なった。巡礼に関しては、福岡県篠栗町での四国の写し巡礼による表象を通じてのコスモロジーの再構成、四国の遍路では個別の表象と世界遺産化運動や生態学などとの関わりの動態的考察を行った。祝祭に関しては、静岡県森町の祭りを通しての市町村合併運動への反対運動や空間の変容に対する異議申し立てを検討した。記憶については、長崎県出島で民俗が市場経済化に伴い、物理的な空間を新たに創造して歴史を読み替え、観光戦略を推進する過程を考察し、静岡県伊豆半島では、自然保護に関わる事業者や観光客の言説を分析し、霊性を求める空間の民俗の表象を見いだした。記憶と祝祭については、石川県能登半島の事例で読み替えられる民俗宗教空間の表象を明治の近代宗教行政との関わりで考察した。沖縄の新興住宅地を対象とした調査では、住民主体の歴史記録づくりを事例に記憶の喚起と再構成を抽出した。総じて、空間の表象という新しい観点からの宗教民俗学への方向性を見出すことが可能になった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】4,070千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 570千円)