困難な時代における空間実装戦略とその評価を目指した現代図書館計画の国際比較
【研究キーワード】
図書館 / 空間認知 / 計画プロセス / 運営と空間 / 公共性 / 公共施設 / 空間戦略 / 注視行動 / 自由歩行 / 探索歩行
【研究成果の概要】
海外実態調査が困難であった今年度は、調査計画を変更し、後半に行う予定であった利用者の眼前に空間として何が生起したかを探る空間認知調査を先行して実施した。
具体的には、A)建築家による特徴的な空間を持つ図書館(ぎふメディアコスモス)、B)民間事業者による新しい図書分類を用いた図書館(多賀城市図書館)、C)従来型の図書館(仙台市泉図書館)に対してアイマークレコーダーによる空間認知調査を行った。
調査では、自由歩行時と実際に本を探す探索歩行時で空間認知の仕方に差が見られた。低い独立書架を配置し、視覚的な広がりを持ったA図書館では、自由歩行と探索歩行で空間認知の仕方が大きく変化していたが、高い壁式書架に囲まれたB図書館や、グリッド状に規則的に独立書架が配置されたC図書館では、自由歩行と探索歩行、両者の注視対象の変化は少なかった。探索歩行で、A図書館では、探索歩行開始時は空間やサインから情報を得ていたが、書架周囲では配架表示を注視することで記号から情報を得ていた。一方、B図書館では記号による情報の取得は少なく、探索歩行開始時と書架周辺の両方で、高さや配置の異なる書架のまとまりから情報を得るための注視がみられた。対照的に、C図書館では探索歩行開始時は案内図から、書架周辺では配架表示や著者名表示からと、常に記号から情報を読み取っていた。
空間の構造によって、空間認知行動に大きな差が生まれることを確認出来たという事実から、一般図書館では記号的に扱われている行動が、新しい空間構造を持つ図書館では、異なる認識の下で展開されていることを具体的に把握した。設計側の空間戦略と利用側の空間認知相互の関係性を理解するための基本項目を絞り込むなど、今後の展開のために有用な知見が得られた。
【研究代表者】