近接性の再構築にもとづくポストコロナの空間デザイン
【研究キーワード】
近接性 / ポストコロナ / 空間デザイン / 距離 / つながり / デジタル / ディスクリート
【研究成果の概要】
Covid-19によるパンデミックは、私たちの社会環境や人間関係にさまざまな影響を与えている。今後の社会の本質的な課題は、人間を離し隔てることではなく、人間どうしの「近接性」を再構築することにあると考えている。本研究は、文化人類学から発生した「近接性」の概念を「距離の近さ+つながりの強さ」によって再構築し、これをもとにポストコロナ時代の「人間と空間」のあり方を提起する。研究の流れとしては、コロナ禍における近接性の現状把握を行い、新たな近接性の概念構築を試み、従来の建築類型にとらわれない新しい空間デザインの方法を解明することを目標としている。当該年度においては、まず近接性の現状把握に取り組み、近接性の概念構築のための準備作業を行った。
「距離とつながり」の視点から各種の建築類型の空間状態を明らかにし、一方で「デジタルとディスクリート」の視点から実空間と情報空間における人間関係の状態を明らかにした。現在のコロナ禍で起きていることは、前者の空間状態に後者の人間関係を重ね合わせることであり、そこには元々の建築プログラムでは想定されなかった様々なズレが発生している。今後この「新常態」がどこまで定着するかはわからない。しかし、現在の利用状況の中から新しい空間デザインの萌芽を読み取ることができる。空間デザインに関わる近接性の指標をブレークダウンして設定すると、①人間距離/②人間密度は距離と密度に関わる指標、③空間規模/④配置形式は規模と配置に関わる指標、⑤利用動態/⑥機能分担は空間の使い方に関わる指標、⑦境界状況/⑧空間形態は連結と分離に関わる指標、⑨時間同期/⑩世界設定は時間と空間の基本設定に関わる指標である。以上にあげた指標群によって、多様な近接性の現状を把握することができるようになった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)