高齢者擬似体験用具を使用した高齢者の避難行動特性の定量化の手法
【研究分野】建築環境・設備
【研究キーワード】
高齢者 / 擬似高齢者 / インスタントシニア / 防火 / 群衆避難 / 歩行行動 / 避難 / バリアフリー / 身体障害者 / 群集
【研究成果の概要】
高齢者擬似体験用具を装着した健常者(以下「擬似高齢者」と称す)による高齢者の歩行行動の再現可能性を検証するため、同様の実験条件において、実際の高齢者と擬似高齢者双方(以下「擬似高齢者等」と称す)による実験を行った。まず擬似高齢者等の単独での歩行行動を実測することで歩行行動の特性を把握し、次に擬似高齢者等と健常者が混在する群集について、擬似高齢者等の人数と配置を変化させて歩行速度を実測し、擬似高齢者等の存在が群集全体の歩行行動特性に及ぼす影響を分析した。その結果、以下の事項が明らかとなった。
(1)高齢者擬似体験用具は、水平歩行時には視聴覚装備より手足の束縛や杖の使用が歩行速度に与える影響の方が大きい。
(2)水平歩行の場合、擬似高齢者は単独歩行時と群集歩行時の歩行速度の差が大きく、群集歩行時には歩行速度が斉一化するが、実際の高齢者は水平歩行時の単独時歩行速度と群集時歩行速度の差が小さい。擬似高齢者は階段歩行時には単独時歩行速度と群集時歩行速度の差が小さくなり、水平歩行時に比べ高齢者の歩行行動をより良く再現する。
(3)実際の高齢者は同じ年齢層でも歩行速度の個人差が大きく、系統的なデータを得るのは困難であるが、擬似高齢者の歩行速度は群集歩行時0.7〜1.1m/sの範囲に収斂し、この値は実際の高齢被験者の中でも年齢が高く歩行速度が遅い被験者の歩行速度に相当するため、擬似高齢者は高齢者の代用になり得る。
(4)群集後方の健常者が前方の擬似高齢者を追い越して歩行できる場合、群集密度が約2.6人/m^2以下であれば群集は軽交通の歩行状態となり、歩行速度が約0.8m/sの擬似高齢者が群集内に1人増加するに従って群集全体の歩行速度は約0.1m/s低下する。擬似高齢者が群集前方に集中的に配置される場合、後方の健常者は前に出られず群集は重交通の歩行状態となり、密度が約1.9人/m^2以下でないと歩行状態は安定しない。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,900千円)