難民キャンプの持続可能な都市空間への転換に関する研究
【研究キーワード】
難民キャンプ / 占有 / 長期化難民状態 / カクマ / 空間変容 / ホストコミュニティ / ケニア / スラム / カクマ難民キャンプ / 民族 / 地元住民 / ガイドライン / 生業 / 長期居住
【研究成果の概要】
本研究の目的は、難民キャンプという制度の想定と居住がもたらす空間変容の実態のずれを明確にすることだ。主要な調査対象であるケニアのカクマ難民キャンプにおいては、所有という権利が認められていない中で、自分や世帯の空間的範囲を明確にして、暮らしやすいように空間を設え、交流の場を形成し、同族の流入者を受け入れるなど、占有概念が見られた。道路構成のヒエラルキーと場所の特徴も生まれていた。こうした難民自身らによる改変は、当地を管理する国際行政機関などには評価されておらず、改変の対象だと捉えられていた。筆者らは査読論文などにおいて論じたように、こうした現象に、人間が生活していくための価値を見出した。
【研究の社会的意義】
住民となった難民自身は日々の生活において工夫しながら空間の手入れを行っている。その結果としての空間変容は、空間の管理者としての国際機関にとっては改変すべき対象だと捉えられていた。こうした空間変容はインフォーマル市街地などでも一般的にみられる。また、自ずと生じた空間変容と制度が想定している空間とのズレは、たとえば被災後にみられる被災者自身が行う空間変容が行政によって進められる復興事業によって撤去される現象と同一である。制度が想定している所有概念と、実態としての居住がもたらす占有概念との差異だ。こうした論点は、現在の制度的世界とは異なる社会を想定するにあたって、重要な示唆だといえる。
【研究代表者】