セラミック薄膜における相化学的特異現象の解明とその誘起物性への応用
【研究分野】無機材料・物性
【研究キーワード】
ドーピング / 薄膜 / 格子定数 / 半導体 / ペロブスカイト / MOD / TEM / PLD / 半導体化 / MOCVD / スパッタリング
【研究成果の概要】
本研究は今後電子セラミックス部品やメモリーデバイスなどに広く利用されることが予想されるペロブスカイト構造セラミックス薄膜に見られるバルク体(焼結体)とは異なる、いわば異常現象を明らかにし、その機構を解明して、セラミック薄膜の特異性から新たな機能を探索する手がかりを得ようとするものである。ここでの特異性は異種原子のドーピング化の難易性、固溶域の拡大、超格子の出現、超薄層からなる積層体の出現などである。本研究では、種々の方法で作成したセラミックス薄膜におけるドーピング異常現象をデータから探索し、物性との関係を検討した。その結果、(1)PLD法で作製したSrTiO_3薄膜ではMOCVDで作製した薄膜と同様に広いSr/Ti比において単相のペロブスカイト相が生成し、格子定数が連続的に大きく変化することを見いだした。これらの試料のTEM観察からは顕著な格子欠陥は見られなかった。一方、化学溶液法であるMOD法で作製したSrTiO_3薄膜はアモルファスとなり、結晶化しなかった。さらに、作製した薄膜の還元熱処理により電流-電圧特性のSr/Ti比依存性を調べた。その結果、電流-電圧特性が直線的に成るものとバリスタ特性を示すものがあることが明らかになった。さらに、(2)バルクでは安定化ジルコニア(YSZ)中にNbはほとんど固溶しないが、PLD法でNbを添加したYSZ薄膜を作製すると、少なくとも20mol%までのNb_2O_5添加までYSZの格子定数は連続的に変化し、容量-電圧特性が著しく改善されることが見いだされた。これらの例が示すように、薄膜ではバルクでは理解することができない多くの異常現象が見いだされた。
【研究代表者】