吸着ヘリウム3薄膜の2次元核磁性
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
低次元量子スピン系 / 量子固体 / 交換相互作用 / 超低温物理学 / 核磁気共鳴 / 比熱
【研究成果の概要】
NMR実験
Grafoil上に物理吸着した^3He薄膜の磁化を75μKまで測定した。2層目が液相の状態での結果から、1層目はマイクロケルビン領域までCurieの法則に従うことを見い出した。また、強磁性領域において、絶対零度に外挿した磁化の振る舞い、面密度にあまり依存しない周波数シフト、そして高温域のfittingから得られる反強磁性に寄与しているスピンの個数、これらは強磁性的な面密度領域における2相共存モデルを強く支持する。また波数k=0のスピン波が低温域での磁化に重要な役割を果たしていることも確認した。一方、反強磁性領域においてはElserのモデルを支持する結果を得た。いずれの面密度においても75μKにいたる低温まで相転移を示唆する磁化の異常は見られなかった。
比熱測定
Grafoil上吸着^3He薄膜の比熱を、吸着第2層に生ずる固相が反強磁性的な磁性を示す面密度において、0.3mKから60mKの温度範囲で測定した。測定結果はGreywallによる測定[4]とは定性的に異なり、〜2mKに緩やかなピークをもち、高温域はT^<-2>に比例する振る舞いを示した。これらの振る舞いは三角格子上、或いはカゴメ格子上のHeisenberg系に対する理論計算と半定量的に一致する。T〜|J|における比熱のピークより低温については温度に比例した振る舞いが得られており、0.3mKに至るまで比熱異常は観測されない。Greywallが提起した"missing entropy"の問題に関しては、現状では高温域のデータに誤差が大きく結論は引き出せず、高温域の精度の高い測定が必要である。
【研究代表者】