量子細線における一次元励起発光の室温デバイス応用
【研究分野】電子・電気材料工学
【研究キーワード】
量子細線 / 一次元励起子 / 室温 / 分子線エピタキシー / 品質評価 / 閉じ込めエネルギー / 励起子 / 温度依存性 / 顕微分光 / レーザー / 横方向閉じ込め / 束縛エネルギー / 発光デバイス
【研究成果の概要】
本研究の目的は、人工的に作られたGaAs系量子細線において、室温の発光過程でも有効に働くような強く安定な一次元励起子効果を検証することと、また逆に室温での動作を阻害する物理的・物質的要因をつきとめることである。このため、測定手段として、温度変化測定に対して安定な分解能・検出効率の高い顕微PLイメージ・分光測定システムを開発し用いた。
試料として、まず、T型量子細線においてlnGaAsを用いて強い閉じ込めを実現するとともに、構造の均一性を阻害する要因を高分解能の顕微分光法をもちいて調べた。最終的に用いた試料構造で得られた横方向閉じ込めエネルギーは35meVであった。これは、対応するGaAsT型量子細線での18meVという値と比べると約2倍の進歩である。AlAsバリアと組み合わせることにより、より深い閉じ込めが期待できる。この試料について発光スペクトルの温度依存性を測定したところ、150K程度までは量子細線の発光が明瞭に観測されることが確かめられた。励起子の拡散過程・熱活性化過程・非発光過程の関与をあわせて検討中である。
T型量子細線の品質は、(110)へき開面上のMBE結晶成長に強く依存している。そもそも、(110)面上の結晶成長により得られた量子井戸構造は、(100)面上の結晶成長により得られた同型の量子井戸構造に比べて、つねに発光線幅が大きく、T型量子細線の品質を低下させる。このメカニズムを理解するために、AFMと高分解能顕微発光イメージやスペクトル測定を行い、(110)面特有のミクロンスケールのテラス形成とそこに生じる局在電子状態の存在を確認した。
また、制御性には欠けるがもともと閉じ込めの強いリッジ型量子細線を用いて、実際にレーザー構造を設計・作製し、室温までのレーザー発振の様子を測定し、発振の起源や均一性の評価などを行った。
【研究代表者】