金属の吸着した半導体表面の原子配列構造及び電子状態と電気的特性との関連の解明
【研究分野】固体物性
【研究キーワード】
半導体表面 / 表面電気伝導 / 反射高速電子回折 / 表面電子状態 / 空間電荷層 / バンド構造 / 表面超構造 / ホール効果
【研究成果の概要】
本研究は、半導体表面構造及びその上のエピタクシャル金属超薄膜の構造と、その電気的特性(表面電気伝導やホール効果など)の関連を明かにすることを目的とする。表面・薄膜の構造やエピタクシャル成長を原子レベルで解析・制御しながら、その電気的特性の測定をその場(in‐situ)で同時に行うことに本研究の特徴がある。これにより、表面・界面の単原子層程度の構造に敏感に依存した物性の発現を捉えることができ、新しい機能デバイスの基礎を築く可能性がでてくるものと期待している。本研究期間中の研究成果の概要は以下の通りである。
1.新しい超高真空RHEED(反射高速電子回折)用試料ホルダーを設計・製作した。それは、室温から1500Kまでの範囲で試料温度を変えられ、さらに試料に磁場を印加でき、RHEED観察とともに試料の電気抵抗とホール係数を同時に測定できるように工夫されている。
2.室温に保たれたSi(111)表面上に金属(Ag、Au、In、Pbなど)を連続的に蒸着する過程でのSiウエハ全体の電気抵抗が、基板表面の構造に敏感に依存して変化することを見いだした。表面のわずか1、2原子層の構造の差異がバルクSiの電気伝導に著しい影響を及ぼしているのである。これは、原子尺度での構造の差異がSi表面の電子状態を変え、さらには表面空間電荷層のキャリアー密度を増減させ、巨視的な電気的特性を変化させていることによると思われる。この発見は、学問的な重要性は勿論のこと、デバイスへの応用という観点からも重要な発見であると考えている。
3.金属蒸着中におけるRHEED観察、表面電気伝導の測定と同時にホール係数の測定も同時に行い、抵抗の増減にみあったキャリアーの増減が観測された。これにより、表面におけるバンドの曲がりの変化とそれによる表面空間電荷層内のキャリアー濃度の変化を捉えたことになる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
井野 正三 | 東京大学 | 理学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1992
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)