液膜法によるマクロライド系抗生物質分離プロセスの開発
【研究分野】反応・分離工学
【研究キーワード】
液膜法 / マクロライド系抗生物質 / 分離 / エリスロマイシン / 分配平衡 / 乳化液膜 / 物質移動 / 速度過程
【研究成果の概要】
マクロライド系抗生物質の1つであるエリスロマイシンは,ろ過された培養液に対し抽出および逆抽出を繰り返すことにより濃縮,粗分離されている。この抽出,逆抽出を同時に行うことのできるものにW/O/W液膜法がある。水相中におけるエリスロマイシンの平衡関係は,高pH域では水素イオン化されていないエリスロマイシン(以下Eとする)側に,低pH域では水素イオン化されたエリスロマイシン(以下EH^+とする)側に移動する。したがって,液膜系の平衡(供給相中のE濃度と回収相中のそれが等しい)状態に至ると,理論的に回収相中のエリスロマイシン(EおよびEH^+)は供給相中の最大で数万倍程度にまで濃縮される。これまでに,本分離法に関して,支持液膜に対してはその速度過程について詳細に検討されているのに対し,実用上重要である乳化液膜に対する検討は比較的少ない。そこで当該研究においては,乳化液膜における透過の速度過程について検討した。
まず,比較的エリスロマイシンの分配係数の大きいと予想されるキシレンを用いて(乳化液膜に関する既往の研究はエリスロマイシンの分配係数の非常に小さいヘプタンが用いられている),キシレン-水相間におけるエリスロマイシンの分配平衡を測定した。なお,キシレンは毒性などの面から実用的な膜液ではないが,その物性が速度過程を検討する上で好ましいため採用した。Eのキシレンに対する分配係数は,ヘプタンに対する場合(既往の研究)の約10^3倍程度であった。ついで,膜液としてキシレンを用いて乳化液膜透過実験を行った。ヘプタンを膜液とした場合においては,Eの総括透過容量係数は供給・回収両水相のpHによらず,透過は液膜相支配であった(既往の研究)が,キシレンを用いた場合には,供給相のpHの増加とともにEの総括透過容量係数は増加し,物質移動抵抗は供給相側にも存在した。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1996
【配分額】1,000千円 (直接経費: 1,000千円)