ホルモンの分子構造と脳下垂体の構造からみた生殖腺刺激ホルモンの進化
【研究分野】生物形態・構造
【研究キーワード】
生殖腺刺激ホルモン / αサブユニット / βサブユニット / 分子構造 / 分子進化 / cDNA / 黄体形成ホルモン / 濾胞刺激ホルモン / 脊椎動物 / ホルモン / 遺伝子 / 脳下垂体 / cDNAクローニング / 系統進化 / 肺魚 / ドチザメ
【研究成果の概要】
A.脊椎動物における脳下垂体糖タンパク質ホルモンαサブユニットの進化
1)肺魚類、硬鱗魚類、板鰓魚類、両生類、爬虫類のαサブユニットcDNAのクローニングに成功し、この分子は条鰭類では他のものにおけるより進化速度がはるかに速いと考えられることを明らかにした。
2)上記のことは、脳下垂体の構造についてもいえて、条鰭類のみが他の動物とは明らかに異なった構造をしている。板鰓類や肺魚類の脳下垂体の構造は、条鰭類よりも四足動物の構造に似ている。
3)四足動物の中でも無尾両生類のBufo属やRana属のαサブユニットは急速に進化して、特殊化していることを明らかにした。
B.脊椎動物における生殖腺刺激ホルモンβサブユニットの進化
1)肺魚類の濾胞刺激ホルモン(FSH)様サブユニット、両生類及び爬虫類のFSH及び黄体形成ホルモン(LH)のサブユニットのcDNAのクローニングを行い、これらのサブユニット分子の一次構造を推定することが出来た。
2)一般に、脊椎動物の中では濾胞刺激ホルモン(FSH)のβサブユニットのほうが、黄体形成ホルモン(LH)のβサブユニットよりもその分子構造がよりよく保存されていることを明らかにした。
2)さらにFSHβにくらべLHβの進化速度は、高等な四足動物においてはそれまでより速くなったと考えられる。
C.総括
生殖腺刺激ホルモンのサブユニット分子の進化速度は、脊椎動物の中でも決して一定でなく、ホルモンの種類によっても、また動物のグループによっても、かなり異なることが分かった。これらの結果はミトコンドリアDNAなどによる脊椎動物の系統のについての研究結果と一致する点もあるが異なる点もあって、脊椎動物の進化について重要な示唆がえられた。脳下垂体の構造についても同じようなことが考えられた。
【研究代表者】