無尾両生類の下垂体神経葉ホルモン受容体遺伝子の解析
【研究分野】生物形態・構造
【研究キーワード】
神経葉ホルモン / バソトシン / 受容体 / 無尾両生類 / cDNAクローニング / 体液浸透圧 / 体液量 / 変態
【研究成果の概要】
前年度までの研究から、下垂体神経葉ホルモンのバソトシン(VT)が、無尾両生類の体液浸透圧および体液量の調節に重要であること、また個体発生の過程においては、変態にともなう陸上への進出に重要な役割を果たすことが示唆されてきた。本研究では、無尾両生類におけるVTの役割を明らかにするため、VT受容体の発現の変動を調べることを目的として、VT受容体cDNAのクローニングを行った。
まず、哺乳類のデーターをもとに、RT-PCR法により部分的なクローンを得ることを試みた。ウシガエルとヒキガエルの腎臓および膀胱からmRNAを抽出し・精製し、cDNAを合成した。神経葉ホルモン受容体は、膜7回貫通型の受容体ファミリーに属する。その構造において、膜貫通部分やホルモン結合部位と予想される部分は、神経葉ホルモン受容体ファミリーの間で比較的保存性が高いと考えられる。そこで、これらの領域に対するdegenerateプライマーを作成し、PCRに用いた。RT-PCRを行った結果、ウシガエルとヒキガエルの両方で、水・電解質代謝の調節に関わると考えられるV-2型受容体cDNAクローンが得られた。ヒキガエルでは、もう一つの神経葉ホルモンであるメソトシンの受容体cDNAクローンも得られた。現在、cDNAライブラリーを作成し、全長の解析を行っている。ノーザン解析を行ったところ、V-2型受容体は、膀胱や腎臓といった浸透圧調節器官で特異的に発現していることがわかつた。一方、哺乳類において血圧などの調節に関わるV-1型受容体cDNAのクローン化も、肝臓のmRNAを用いて試みているが、まだ成功していない。
哺乳類以外でV-2型受容体遺伝子のクローン化に成功したのは、本研究が始めてである。今後は、得られたcDNAクローンを用い、ホルモン遺伝子の発現とともに受容体遺伝子の発現の変動を解析していく。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1994
【配分額】900千円 (直接経費: 900千円)