波長可変赤外ピコ秒パルスを用いる固体表面吸着種の反応ダイナミクス
【研究分野】物理化学一般
【研究キーワード】
赤外ピコ秒パルス / 固体表面 / 反応ダイナミクス / LB膜 / ニオブ酸リチウム
【研究成果の概要】
既存のピコ秒Nd:YAGレ-ザ-の基本波1.06μmを2個のニオブ酸リチウム単結晶(1cm×1cm×5cm)を通してパラメトリック増巾を行ない波長可変なピコ秒赤外パルスを得た。可変波長領域は2700〜4000cm^<ー1>でYAGレ-ザ-光のニオブ酸リチウム単結晶への入射角を変化させる事により赤外波長をコントロ-ルした。約20mJ、35ピコ秒の基本波を用いて100μJオ-ダ-の強度で波数巾10〜20cm^<ー1>の光を取り出す事ができた。まず、この光を用いて溶融石英基板上に累積したアラキン酸カドミウムのLB膜をピコ秒赤外パルスで励起した時の変化を詳細に検討した。アラキン酸カドミウムの状態の観測には、FTーIRスペクトル及び界面和周波発生法(SFG)を用いた。アラキン酸カドミウム9層のLB膜は、引き上げ方向にメチル基が配向している事がSFGより明らかになっている。またFTーIRスペクトルより2920cm^<ー1>付近にメチレン基の非対称伸縮振動に帰属させる強い吸収がある。この2920cm^<ー1>に波長可変の赤外パルスをチュ-ニングして光照射を行なうとアラキン酸カドミウムのメチル基の配向が変化する事を見出した。この変化は、赤外パルスの波長を高波数あるいは低波数側へ変化させると観測されなくなる。つまりメチレン基の非対称伸縮振動の吸収に共鳴した変化である。またSFG観測によりこの変化により配向性を持っていたメチル基がランダムな配向になっている事が明らかとなった。この様な変化を引き続き起こす赤外パルスの強度には明確なしきい値が存在する事から、通常の熱励起によるものとは異なるピコ秒パルスによる新しい作用機構が働いている可能性が示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1990
【配分額】1,900千円 (直接経費: 1,900千円)