膜乳化法を用いた新規低毒性人工赤血球の開発
【研究分野】化工物性・移動操作・単位操作
【研究キーワード】
膜分離 / 再生医療 / 膜乳化 / 人工赤血球 / ヘモグロビン
【研究成果の概要】
再生医療、特に組織工学分野において、体外での3次元組織構築と組織移植は究極の目標である。このためには培養組織中に十分な酸素を供給する人工赤血球が必要不可欠である。本研究では、膜乳化技術・非侵襲的化学反応技術、動物細胞の培養技術の融合により、粒径が1~5μm付近で粒度分布が狭い、革新的な人工赤血球とその量産技術の開発を行う。本人工赤血球では、(1)サイズ制御によるエンドサイトーシス低減よって、細胞毒性が格段に低減し、(2)ウシ由来ヘモグロビン(Hb)を用いてコスト・材料供給安定性・酸素運搬特性が格段に向上し、(3)スケーラブルな膜乳化法の応用により将来大量生産供給が可能になる。膜工学を軸に分野横断的にブレークスルーを実現し、従来の人工赤血球の問題群を克服することを目標とした。本研究課題では、当初に挙げた各項目をほぼ100%実現した。まず市販Hbがメト化により失活しているため、新鮮なウシ血液からHbを抽出し、SDS-PAGEとUV-vis測定により、メト化率2%以下でHbを抽出した。これを用いて、10wt/v%の超高濃度Hbの膜乳化法を検討した。Hb単独では膜へのファウリングも大きく、また様々な界面活性剤を用いても安定なエマルションが得られなかったが、アルブミン1~20wt/v%と10wt/v%Hbを混合して乳化することによって、粒径が4μmの均一エマルション作製に成功し、その後にグルタルアルデヒド架橋することによって、Hb粒子の大量作製に成功した。酸素解離曲線測定によりP50の値は13mmHg程度となった。抽出Hbの値は19mmHgとなり、6mmHg程度低濃度側にシフトし、これは架橋Hbの既往の報告と良く一致する。さらにHepG2のディッシュ培養下で、MTT assayとLive/Dead染色を行い、Hb溶液に比べて高濃度でも毒性が発現しないことを証明した。
【研究代表者】
【研究連携者】 |
赤松 憲樹 | 工学院大学 | 工学部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
酒井 康行 | 東京大学 | 生産技術研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2011 - 2012
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)