百年,千年後の影響を見据えた文化財にやさしい陽子線励起単色X線による蛍光X線分析
【研究キーワード】
蛍光X線分析 / 文化財 / 放射線損傷 / 荷電粒子励起X線放出 / 静電イオン加速器 / 陽子線励起X線放出 / 赤外分光分析
【研究成果の概要】
文化財のうち,絵画等に用いられる青色顔料中の銅(Cu)の分析を想定し,Cuを含むゼラチン(膠を模擬)標準試料の組成の一様化,表面の平滑化等の改善を行った後,これらのPIXRF(陽子線励起蛍光X線分析)測定を行い,Cuの検出下限の評価を試みた.Cuのみを低線量で選択的に励起するため,CuのK吸収端(8.98 keV)よりわずかに高いエネルギーのKX線(9.87 keV)を発生するゲルマニウム(Ge)単体標的を真空容器内に置き,2.5 MeV陽子線を照射した.発生したGe-KX線をX線キャピラリーレンズで上記ゼラチン試料上に集束させた.試料から発生した二次X線をCdTe半導体検出器で測定し,目的とするCuのKX線を同定することができた.しかし,特性X線の収量やノイズレベルが安定せず,Cuの検出下限の評価は困難であった.また並行してX線照射によるゼラチン試料の損傷に伴うFT-IRスペクトルの変化を検出するため,試料の支持・固定方法等の改良を行った結果,FT-IRスペクトルの測定結果に多少の再現性向上が認められた.
一方,実試料の分析に必要な一次単色X線強度を達成するため,一次陽子ビーム源であるイオン源から加速器への入射系,加速器本体,ビーム輸送・集束系に至る加速器系全体の運転条件の最適化及び構成機器の改良を行った.特にイオン源については現有の横引き出し型冷陰極PIG負イオン源に対し,プラズマ閉じ込め磁場による不必要なイオンの偏向を補正磁場により修正してビーム出力を向上させる作業を行った.その結果,ビーム強度の改善が見られた.ビームエミッタンス測定も行い,ビーム電流に与える補正磁場の効果が確認できた.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
長谷川 純 | 東京工業大学 | 科学技術創成研究院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
羽倉 尚人 | 東京都市大学 | 理工学部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)