ナノ周期構造転移を利用した熱伝導率変調材料の開拓
【研究キーワード】
熱伝導率 / 構造転移 / 第一原理計算
【研究成果の概要】
層状化合物のナノ周期構造転移を利用した巨大熱伝導率変調材料を開発した。高温相を室温凍結させる非平衡合成により2次元(2D)構造SnSeと3次元(3D)構造PbSeの固溶体(Pb1-xSnx)Seを合成し、x=0.5において2D構造と3D構造の直接相境界を形成した。温度変化によって2D構造から3D構造へ可逆的に転移させ、熱伝導率を3倍変化させることに成功した。半導体(2D構造)から金属(3D構造)へ変化することで電気伝導度が6桁増加し、電子の熱伝導率への寄与が大きくなる一方で、2D構造では層構造が格子振動による熱伝導を阻害するため、結果として熱伝導率の変化が大きくなるというメカニズムも解明した。
【研究の社会的意義】
温度変化による層状化合物のナノ周期構造転移を利用して、熱伝導率が大きく変化する材料(Pb0.5Sn0.5)Seを開発した。実用化に向けては、相転移温度を向上させること、熱伝導率の昇温曲線と降温曲線のヒステリシスを小さくすることなど、解決すべき課題はあるが、さまざまな材料系や結晶構造系の固溶体に展開することでさらなる性能向上が期待できる。今回の研究で得られた、結晶構造を人為的に制御して熱伝導率を変化させるという全く新しいアプローチは今後、結晶構造や化学結合が異なるさまざまな無機結晶系においても、高度な熱制御が可能な材料開発につながると期待される。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2022-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)