磁場・電場による小分子の配向制御は熱エネルギーに打ち勝てないために極めて難しいが、分子間相互作用により集合体を形成する特異な配位子と金属イオンを組み合わせることにより自己集合の過程を磁場・電場により制御し初期段階で生成する微小な核の配向を制御することで、通常結晶成長が難しい準安定な異方的細孔性ネットワーク錯体(MOF)を創製することを目的とする。例えば、分子間相互作用により集合体を形成する配位子と比較的磁気的異方性が大きな金属イオンを組み合わせることにより自己集合の過程を磁場により制御することを検討する。さらに、様々な金属イオンと組み合わせることにより電場を利用することによって異方的なMOFの構築を検討する。タンパク質や有機物などの反磁性体の場合、粒子の磁気的異方性は、「分子そのものの構造」や「分子の集合体(結晶・繊維など)としての構造」の異方性に基づくものと、粒子の「形状」の異方性に基づくものに分類される。ベンゼンのような芳香環は、コイルのように振る舞い、磁場をかけることにより誘導電流が発生し、磁場を打ち消しあう方向に磁化しようとする。結果的に芳香環平面はエネルギー的に一番安定な状態、つまり磁場をかけた方向に対して平行に配向しようとする。ただし、今回の結晶化ターゲットであるMOFの配位子のような小分子1分子では熱エネルギーに打ち勝つことができないため、まず集合体を形成する必要がある。今回分子間相互作用により集合体を形成するカルボン酸基を有する配位子を新規に合成し様々な金属イオンと組み合わせることにより自己集合の過程を磁場により制御することを検討した。条件検討の段階で新規MOFの合成に成功しているが、現在のところ室温で錯形成自体を制御することが難しい状況であるため磁場の影響を評価できる状況に至っていない。
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)