小型汎用パルス強磁場を用いた先端測定による強磁場物性開拓
【研究キーワード】
強磁場物性 / パルス強磁場NMR測定 / 小型パルス磁場装置 / 量子スピン系 / 重い電子系 / パルス強磁場 / 核磁気共鳴 / 超音波測定 / パルス磁場中NMR測定 / パルス強磁場NMR測定 / パルス磁場中NMR測定
【研究成果の概要】
研究計画3年目となる2021年度は、小型汎用パルス磁場発生装置開発を継続的に行うと共に、研究の重心を強磁場物性開拓へと移し、強磁場により引き起こされる新奇電子相の探索を行った。
まず、パルス磁場中核磁気共鳴装置開発の実績として、これまでに開発してきたデジタル無線技術を応用した核磁気共鳴分光装置の詳細と、この新しい核磁気共鳴分光装置を用いたパルス磁場中NMR測定技術に関する論文を公表し、この先進測定技術を確立した。また、パルス電流源の拡充、ヘリウムフロークライオスタットの開発を行い、測定可能な磁場範囲、温度範囲を拡張した。これによりこれまで大型施設を利用していた多くの実験が研究室内で実現可能となった。
強磁場物性開拓に関しては、これまでも研究を続けてきたマルチフェロイック物質についてNMRスペクトルの磁場印可方向依存性など詳細な実験を行い、強磁場中で新たに発見した磁気異常を確固たるものとした。この成果は現在投稿準備中である。また、セリウム系重い電子物質CeRh2Si2についてはこれまでは大型研究施設でしか到達することができなかった強磁場領域で実現するメタ磁性転移を超音波測定から観測することに成功した。このモデル物質における実験に成功したことで、近年隠れた秩序を示すことで注目を集めている他のセリウム系重い電子系物質や、ウラン系超伝導物質についても本研究で開発してきた研究手法が応用可能であることを明らかにした。
また、新物質開発にも進展があり、小型汎用パルス磁場発生装置で到達可能な30テスラ級までの磁場領域で磁気異常を示す新たな量子磁性体を得ることに成功した。これらの物質で実現する新奇磁場誘起相を本研究で開発してきた多角的な研究手法により明らかにすることで、強磁場物性研究のさらなる進展が期待できる。
【研究代表者】