層状有機伝導体における三角格子構造の異方性と電子状態の解明
【研究キーワード】
有機伝導体 / モット絶縁体 / 電荷秩序 / 反強磁性 / 超伝導 / 三角格子構造
【研究成果の概要】
ドナーとアニオンが1:1組成でドナーがユニフォームスタック構造をもつ、真性モット絶縁体(BEDT-TTF)TaF6の多形体構造を見出した。ドナー分子が分子短軸方向にスライドしながらスタックするbeta''構造に近いが、スタック間にアニオンが存在するためスタック間の相互作用がほとんどない構造となっている。バンド計算の結果は極めて1次元性の強いことを示している。電気抵抗が温度を下げると増大していくことから、この物質も真性モット絶縁体であることが明らかになった。beta-(BEDT-TTF)TaF6が四角格子構造であることとは対照的な構造をもつモット絶縁体であるといえる。
ドナー分子と1価のアニオンが2:1組成の物質において、ドナーが4量体構造をもつ物質はバンド絶縁体となるのが普通である。(DMEDO-TTF)2ReO4は、ドナー分子が4量体構造をとりながらスタックする構造をしている。そのような構造にも関わらず、電気抵抗は金属的な振る舞いを示す。構造に基づいてバンド計算を行ったところ、スタック間方向のトランスファー積分が大きいことから、小さなフェルミポケットが現れる半金属的なバンドをもつことが明らかになった。低温で絶縁化することや、電子スピン共鳴の結果から基底状態は非磁性絶縁体であることが明らかになった。低温でも超格子反射は観測されず、構造は室温と酷似している。結晶学的に独立なドナー分子が2つあることから結合距離を比較したところ、室温では結合距離の違いは見出せないが、低温では明らかに異なることを見出した。したがって基底状態は電荷秩序の状態にある。4量体の中心の2分子と端の2分子が異なる価数を持つことは隣接サイト間でのクーロン反発による電荷秩序とは矛盾するため、別の機構による可能性があると考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)