パルス磁場中精密測定で拓く有機固体の強磁場量子物性
【研究キーワード】
パルス強磁場 / 熱測定 / 有機超伝導体 / 強磁場 / 有機伝導体 / 装置開発
【研究成果の概要】
本研究課題はパルス強磁場中精密測定装置の開発をベースにし、開発された装置を使用して有機伝導体の強磁場新奇量子相の研究を目標としている。2020年度は測定装置開発を従点的に行い、当該年度では開発した装置系を活用して幾つかの有機物の強磁場測定を行った。
本課題ではFFLO状態と呼ばれる強磁場中で発現する非従来の対形成機構をもった超伝導状態を測定対象物性の一つとしている。FFLO状態の発現には強磁場だけでなく、精密な磁場角度制御や電子系の純良性などが求められるため実験難度が高く、更にFFLO状態への転移は小さなエントロピー変化しか示さないために検出が容易ではない。2020年度に開発した多目的の精密角度制御パルス強磁場用測定プローブを用いて複数の測定手法で複数のFFLO候補物質(κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brの磁場侵入長測定、κ-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2の超音波測定、λ-(BETS)2GaCl4の磁気熱量効果)にアプローチすることができ、FFLO状態の検出に有利な測定手法だけでなく、物質間比較からFFLOに重要な物理パラメータの決定ができ、それぞれの成果が論文として出版・投稿され、次年度以降への研究課題へとも繋がっている。
これらFFLO候補物質は強相関電子系に属しており、バンド幅制御によりMott転移や電荷秩序転移を示す。本課題の研究を行う際に、これら周辺物性の強磁場応答に関してもいくつか新しい知見が得られたため、共同研究者と他の課題へ発展させている。
本研究課題で実施した類似測定・物理を有機物だけでなく無機物へ拡張、展開し、外部研究室との共同研究にも利用し、多岐にわたる研究課題に貢献している。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)