一段階多電子移動錯体を利用する分子変換系の構築
【研究分野】工業物理化学
【研究キーワード】
バナジウム錯体 / 多核錯体 / 酸素4電子還元 / 一段階多電子移動 / X線結晶解析 / μ-ジオキソ構造 / 電極反応 / 平面配位子 / 複核錯体 / 酸素還元
【研究成果の概要】
バナジルサレン多核錯体を電子移動担体として作動させると、酸素の多電子還元が可能となる。酸化還元電位を配位子を変えて制御し、酸素4電子還元の熱力学電位に調節することにより、これを電子移動担体とする分子状酸素の多電子還元系確立を研究目的とする。これと同時に連続反応による基質分子の酸化触媒としても作動させ、新しい物質変換系の確立を実証するのが本研究のねらいである。
初年度は置換不活性な平面配位子を選択、対応するバナジル錯体を合成しサイクリックボルタンメトリーにより酸化還元電位を正確に決定した。また複核錯体を合成、シッフ塩基錯体の場合対応するバナジウム複核錯体を効率よく得ることができた。X線回折法を用いて酸素還元サイトの構造解析を実施、低酸化状態のバナジウム複核錯体では不均化反応が生起しないため良質の錯体単結晶を得ることができた。近赤外スペクトルより混合原子価バナジウム錯体の電子状態と非極在化率、X線結晶解析より酸素還元活性なバナジウム(III)の配置と配位環境が明らかとなり、酸素錯体の構造と生成機構が決定された。また、酸素化反応次数の解析から、μ-ジオキソ型の中間体を経由する電子移動機構が解明された。
第2年次は選択された錯体種を電子担体として酸素還元を実施、回転リングディスクボルタンメトリーのKoutecky-Levichプロットから、電子数と水生成を確認、多電子移動の場を利用した分子変換の構築要件を明らかにした。具体的には、初年度に構造解明した複核錯体を用いて、酸素飽和させた有機溶媒系の電解還元を実施、触媒サイクル数(>10)を確認、過酸化水素の副生抑制を実証、選択度高い酸素4電子還元系として定着させることができた。
【研究代表者】