比較ゲノム解析によるシロアリの社会性進化に伴うゲノム変異の同定
【研究キーワード】
真社会性 / 亜社会性 / 遺伝子 / 自然選択 / 昆虫 / 自然淘汰 / 遺伝子重複 / シロアリ / 社会性 / 比較ゲノム / ゴキブリ
【研究成果の概要】
「単独性生物から社会性生物への進化」は、生物界に新たな複雑性を生じさせた生物進化史上の革新的な出来事の一つであり、生物学において特に注目すべき重要な現象である。本研究では、社会性生物の中でも特に複雑な社会を構築し高度な利他行動を示すシロアリに注目し、比較ゲノム解析によって単独性のゴキブリから亜社会性のゴキブリ、そして真社会性のシロアリが進化する過程でどのようなゲノム領域が急速に進化したのかを明らかにする。昨年度までの研究で、真社会性のシロアリ類に最も近縁な昆虫である亜社会性のキゴキブリのゲノム解読と遺伝子アノテーションを行った。このアノテーションで作成されたキゴキブリの遺伝子モデルと既存のゴキブリ・シロアリの遺伝子モデルを使用し、キゴキブリまたはシロアリ類の進化過程、つまり「単独性から亜社会性」または「亜社会性から真社会性」への進化過程において正の自然選択が生じた遺伝子の同定を試みた。PAMLソフトウェアによる自然選択解析の結果、19遺伝子または5遺伝子がそれぞれキゴキブリまたはシロアリ類の進化過程で正の自然選択が検出された。前者の19遺伝子の中には、ネバダオオシロアリにおいてワーカーからソルジャーへの分化に関わると示唆されているNlaz遺伝子が含まれていた。この遺伝子はシロアリでは女王と子のコミュニケーションに関する機能を有すると推測されており、キゴキブリの親と子の相互作用の構築においても重要である可能性がある。そのほかの遺伝子にはDNA結合ドメインを持つものなどが含まれていた。後者の5遺伝子の中には、LisH domainまたはFERM domainを含む遺伝子があることがわかったが、シロアリにおけるそれらの遺伝子の具体的な機能は現時点では不明である。今後はこれらの自然選択圧が検出された遺伝子の機能解析を行うことで、亜社会性や真社会性の進化機構の解明を目指す。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮崎 智史 | 玉川大学 | 農学部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)