頭足類の「個のない社会」の形成維持機構に関する鳥類・哺乳類との比較研究
【研究キーワード】
頭足類 / 鳥類 / 霊長類 / 社会 / 遺伝子
【研究成果の概要】
頭足類における「個のない社会」の形成と維持の仕組みを実験的に解明することを目的とし、頭足類、鳥類、霊長類を対象にヴァーチャル・リアリティー比較社会認知科学と遺伝子解析を導入して、行動を分析する。令和3年度は、接近行動と離反行動を誘発する要因を検証し、以下のような成果を得た。
頭足類:アオリイカを主な対象として、同種の単一個体および複数個体のアニメーションを提示したところ、アオリイカはこれらに関心を示し、定位した。また、単一個体に比べて複数個体のアニメーションに対し距離を置く様子が見られた。これらは、アオリイカが同種への嗜好性を持つこと、群れ個体に対してはある程度離反して自身の位置取りをすることを現すと考えられた。また、トラフコウイカとヒラオリダコ、オオモルモンダコについて、同種への関心や視覚特性を調べた。
霊長類:マーモセットが対面するヴァーチャル・リアリティ個体の行動に合わせて、自身の行動を変えるかを調べる前段階として、実際の他個体と対面で行動を調整するかを調べる装置を設計した。R4年度に制作し、実験を実施する。
鳥類:カラスの飼育集団を対象に、社会的ネットワークが安定した群れから1位よび下位個体を24時間除去し、ネットワーク構造と個体の社会行動への影響を調べた。いずれの除去操作も、ネットワーク構造を変化させなかったが、1位個体の除去は2、3位個体の攻撃行動を増加させたことから、1位個体が順位構造の安定化に寄与している可能性が示唆された。並行して、カラスの尿から末梢オキシトシンの計測技術を世界ではじめて確立した。
遺伝子解析:マーモセットおよびヒトの行動の評定を行い、セロトニンの授受に関与する候補遺伝子との関連を見いだして論文発表した。またイヌの性格を質問紙によって評定し、性格特性の品種差を見いだした。さらに関与する遺伝領域をゲノムワイド解析によって探索し、国際学会で発表した。
【研究代表者】