マイクロCTによる化石ホミニド・類人猿骨格の骨梁分析
【研究分野】人類学
【研究キーワード】
人類進化 / ロコモーション / 海綿骨 / 骨梁解析 / リモデリング / 化石 / アフリカ / ケニア / 骨梁 / バイオメカニクス / CT / 類人猿 / 二足性 / ホミニド / 化
【研究成果の概要】
化石類人猿・人類の運動様式を大腿骨骨頭の骨梁構造から明らかにする試みを行った。ケニア国立博物館に小型マイクロCTを輸送し、化石資料の精密CT撮影を行った。鉱物化の著しい資料が多かったが、少数だが分析可能な結果が得られた。もっとも良好な画像が得られた人類化石資料は、ボイセイ猿人(KNM-ER738)の大腿骨頭であった。類人猿化石に関しては、ナチョラピテクス資料の多くでは鮮明な画像が得られた。骨頭上部から直径5mmの球体の関心領域を抽出し、Quant 3Dプログラムで骨梁の異方性を分析した。ヒトでは、上下方向に異方性が著しく高かった。厳密には、主軸は若干前下方向に傾斜し、接地時の制動による負荷が影響を与えていることが示唆された。ローズダイアグラムの分布は円盤状で、板状の骨梁が発達していることを示唆した。ボイセイ猿人の分析結果は、現代人に強く類似し、その歩容が現代人のものと変わらない可能性が高いことを示唆した。チンパンジーでは異方性が強いが、主軸は上後方から下前方へ、また上内側から下外側方向を向いた。ローズダイアグラム全体の形状は、桿状であった。オランウータンでは、骨表面から骨頭中心に向かう方向で異方性が高いが、ローズダイアグラムの形状は同様に桿状であった。ナチョラピテクスのローズダイアグラムはやや楕円体に近く、主軸は骨頭関節面から骨頭中心の方向に向かっていた。こうした結果は、ナチョラピテクスの股関節においては、日常的に様々なタイプの負荷がまんべんに加わっていたことを示唆する。
【研究代表者】