薄板スプライン形態解析に基づくナチョラピテクスの骨形状復元
【研究分野】人類学
【研究キーワード】
形態復元 / 薄板スプライン / 変形化石 / 3次元骨形状モデル / CT / 非線形写像 / 有限要素法 / 自然人類学
【研究成果の概要】
本研究では,土圧により塑性変形を受けた化石の合理的な形態復元アルゴリズムを考案し,その手法を用いてナチョラピテクス化石の形状復元を行うことを目的としている。本年は,四肢骨化石の形状復元手法の開発を行った。
復元の対象は,ナチョラピテクスのタイプ標本KNM-BG-35250の大腿骨遠位端(35250B)と,脛骨近位端(35250E)である。本研究では,現生霊長類の骨形状と化石の問の形態差をまず定量化し,その差を種間変異による形態差と土圧による変形成分に分解し,後者のみを選択的に除去することにより形態の復元を行った。具体的には,CT積層断層画像から化石形状の3次元サーフェスモデルを構築し,形態特徴点の3次元座標を取得した。同様に,リファレンスとして用いるヒヒ,チンパンジー,ニホンザルについてもモデルを構築し,相同な特徴点座標を取得した。この特徴点座標の差を非線形写像関数(薄板スプライン関数)として表すことにより,化石と各リファレンスとの形態差を記述できる。こうして記述した形態差を,等倍スケーリング,異方スケーリング,線形勢断(斜交),非線形部分歪み,の各成分に分解し,各成分をリファレンス間で比較して共通する成分のみを抽出することにより,土圧による変形成分を推定した。そして,抽出した成分のみを用いて構成した写像関数により変形化石形状の逆変形を行い,復元結果とした。
対象とした化石は,非常に強い変形を受けた条件の悪い標本であったが,本手法により土圧による変形成分の多くを取り除くことが可能となった。こうした変形化石の形態復元は,いわゆる名人芸により従来行われてきたが,本手法によれば客観的な復元が可能となる。破断など不連続な変形を扱えないなど手法の限界は残されているものの,化石の生前の姿を推測する上で有用な手法となると考えられた。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)